インドのEV政策でトヨタとスズキが大慌て 日印共同声明ではHVへの言及もあったが…

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ただ中国同様に、急速なモータリゼーションが進むインドでは大気汚染が深刻になりつつある。エコカーを普及させる必要性が高まっているのも事実だ。

国内自動車メーカーの幹部は「フォルクスワーゲンなど欧州勢がインド政府にEVシフトを水面下で進めたのだと思う。彼らは日本勢のようにHVに積極的でないので、有望市場のインドでHVが売れるのをなんとか防ぎたいにちがいない。日本勢もインド政府にHVの有効性を理解してもらえるよう働きかけなくてはならない」と漏らす。

10月25日、東京モーターショーでスズキが発表したEVのコンセプトカー(筆者撮影)

加えて、インドの現地自動車メーカーを育てるという意味でも、EVシフトは有効だ。中国政府が一気にEVシフトを進めているのは、日本勢が優位なHVではなく、横一線でスタートしているEV開発で中国メーカーを優位に立たせようという政策上の思惑がある。これと同じ思惑をインド政府が持っていたとしても不思議ではない。

インド訪問で安倍首相も日本メーカーを支援?

自動車業界関係者によると、9月の訪印中に安倍首相はモディ首相との会談でHVについて触れたという。9月14日に発表された日印共同声明では、「両首脳は、ハイブリッドや電気自動車を含む環境に配慮した自動車の製造とともに、省エネルギー、エネルギー効率およびエネルギー貯蔵の分野における協力をさらに加速させることへの期待を表明した」という文言が明記されている。

共同声明にHVへの言及を滑り込ませ、EVシフトに傾くインド政府をなんとか引き戻そうと働きかけたのだ。だが、市場の行方を決めるのは消費者だ。インド市場でEV、HVのどちらが使い勝手がよく、買い求めやすい価格を実現できるのかがカギとなる。EVに力を入れようとしている欧米勢やタタ自動車などの地元勢とHV派の日本メーカーによる、インド市場をめぐる競争は激しくなるばかりだ。

安井 孝之 ジャーナリスト・Gemba Lab代表

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やすい たかゆき / Takayuki Yasui

1957年兵庫県生まれ。日経ビジネス記者を経て、1988年朝日新聞社に入社。東京経済部、大阪経済部で自動車、流通、金融、財界、産業政策、財政などを取材した。東京経済部次長を経て、2005年に編集委員。企業の経営問題や産業政策を担当し、経済面コラム「波聞風問」などを執筆。2017 年4月、朝日新聞社を退職し、Gemba Lab株式会社設立、フリージャーナリストに。日本記者クラブ企画委員。著書に『これからの優良企業 エクセレント・カンパニーからグッド・カンパニーへ』(PHP研究所)など。

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