神鋼社長、改ざんで時価総額4割消滅の「弁明」 看板の線材製品にも拡大、出荷先は約500社

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だが、川崎氏もある意味インサイダーであり、調査対象の1人のはず。「第三者の外部法律事務所」にも調査を依頼しているというが、いまだにその名前や神鋼との関係性は明らかにしていない。川崎氏自身、2006年に兵庫県加古川市の加古川製鉄所で工場排出ガスの測定データ改ざんが発覚した当時、同製鉄所の副所長を務めていた。

今後、製品の交換やリコールなどの費用がどこまで膨らむかもわからない。これまで改ざんが判明した製品は全体の4%程度としても、調査次第で増加する可能性がある。

「負担コストは顧客との相談次第だが、(負担する)腹積もりはある」と川崎氏は言う。だが、信用失墜による顧客離れや海外株主を含む損害賠償請求を含め、業績への具体的影響についてはまったく予想がつかない状況だ。

しみ付いた偽装・隠蔽体質

川崎博也・会長兼社長は自らの責任について明言しなかった(撮影:大澤誠)

神鋼が成長戦略の柱に位置づけるのが、燃費規制強化に向けた自動車軽量化対策であり、ハイテン(高張力鋼板)、アルミ材、特殊鋼がその製品群である。同社は鉄とアルミの両方を生産する世界唯一のメーカーであり、アルミ材を持たない新日鉄住金やJFEホールディングスとは異なるユニークな存在。本来、その強みが一段と生かせる環境になりつつあるが、アルミ材の品質改ざんでその勢いを殺がれた形だ。

会見で川崎氏は「ハイテンやアルミ材の供給戦略の方向性に変更はない」と述べたが、もしハイテンにまで強度偽装が波及するようなことになれば、その戦略は大幅な見直しを余儀なくされる可能性がある。

川崎氏は自身の進退について、「原因究明と対策をまとめた後に考える」と保留した。また、なぜ改ざんがこれだけ大規模かつ広範囲に広がったのかについても、現段階で言及を避けた。

神鋼は1990年代以降、総会屋利益供与や違法献金を含め、何回も不祥事を繰り返している。昨年6月にグループ会社でステンレス製品の日本工業規格(JIS)違反が表面化した後も改ざんが続いていたということは、同社にしみ付いた偽装・隠蔽体質は極めて根深い。日本のものづくり全体に対する信頼低下にもつながる今回の事態は、“真の第三者”による徹底的な原因究明が必要だ。

次ページ会見での主なやりとり
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