18歳・地下アイドルがハマった「うつ」の隘路 悩み、苦しみ抜いた彼女が自ら明かす真実

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地下アイドルでいる自分に覚えている違和感も、日増しに大きくなっていきました。

当時は意味もなく、アイドルは人気を取るためにうそをついて取り繕うのが仕事だと思い込んでいたので、ずっと割り切れない気持ちを抱えていたのです。そのため私は、地下アイドルの「 ゚*☆姫乃☆*゚」を取り繕い続けていました。

地下アイドルを演じ続けるのにも疲れた頃、私は、女の子の気を引くためにわざと、「あの子のほうがかわいい」と言ってみせるお客さんや、身もふたもなく「次のライブ予約が少ないの、切実」と懇願する地下アイドルや、ファンを下に見るような運営だとか、この世界の下品で傲慢な部分ばかりが目につくようになっていました。

そして私は学校を辞めるのはもちろん、ライブを減らすとか、アルバイトを辞めるとか、疲労への改善策を考える思考能力すら働かない状況に陥っていったのです。体調は悪くないのに、不意に目眩(めまい)と吐き気がして、立ち上がれなくなる日が増えていきました。

そんな生活が2年ほど続き、高校生活も残り少なくなったある朝、私は体調不良でもないのにベッドから起き上がれなくなりました。

助けを求めてやっとのことで電話をかけた担当の編集者から、「この間会ったとき、顔がチック症みたいにけいれんしていたから心療内科に行ったほうがいい」と言われ、自覚のなかった私はなんとか着替えて、学校の近くにある病院へと向かいました。

ほとんど呼吸もままならない状態で、診察を受けながらコートを脱いだら、着の身着のまま急いで羽織ってきたコートもスカートも、バッグも、すべて赤色だったことに気がつきました。

診察室で私は5秒でうつ病と診断されました(実際にはもっとあったはずですが、朦朧としていて覚えていません)。医師からは、「どうしてそんなに働くんですか」と聞かれました。この人は何を言っているんだろう。それとこれとなんの関係があるんだろう。

そういえば、それまで口紅なんてつけなかったのに、診察室の私は似合いもしない、やけに真っ赤な口紅を好んでつけるようになっていました。

いつの間にか私は18歳になっていました。

思考が鈍っている私を利用しようとする男性たち

しかし、うつ病だと診断されてから今度は、妙なことが増えました。世の中には思考が鈍っている年下の女性を好んだり、利用しようとする男性たちが存在していたのです。

特に私の調子が少しでもよくなると、「前のほうが隙(すき)があって好きだった」と言ってくる観客の人がいたのは衝撃でした。

あるときには、雑誌の撮影と言われて遠方まで出掛けたら、編集者も誰もいなくて、カメラマンと2人きりで旅館に誘われたこともありました。

うつが悪化すればするほど、周囲の男性たちの思惑は重くのしかかってきました。

仕事を断れないこともまた、明らかに私を苦しめていました。そして私は、この世界での活動から身を引くための準備に取り掛かったのです。

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