長時間労働で「管理職に罰金刑」ドイツの実際

ドイツ好況は「1日8時間労働」で実現した

象徴的なのは、1日10時間を超える労働が禁止されていること。月平均の残業の上限ではなく、毎日10時間を超えて働いてはいけないのである。

1日の労働は10時間まで許されているが、6カ月間の平均労働時間は1日8時間以下にしなくてはならない。この上限についての例外は、一部の職種を除けば、ありえない。

日本でも労働契約書を交わすべき

日本政府(安倍晋三政権)が働き方改革に乗り出したことは、着手するのがあまりにも遅かったとはいえ、もちろん歓迎すべきことである。日本で働き方改革を実現するための第一歩は、「労働契約書」の締結を義務付けることだ。

ドイツでは企業で雇用されるすべての労働者が、労働契約書(Arbeitsvertrag)を締結する。両者が労働契約書に署名することで、初めて雇用関係が成立することは、ドイツ人にとっての常識である。

ドイツの労働契約書は原則的に無期限で、退職するまで更新する必要がない。

労働契約書には、社員の業務内容、義務、権利、禁止事項、給与、所定労働時間、残業時間の取り扱い、有給休暇日数、会社を辞める際の事前通告の日数などが、こと細かく明記される。

企業側が契約書の内容に違反した場合、社員が労働組合に訴えやすいし、話がこじれた場合でも、労働裁判所で契約違反を証明しやすい。弱い立場の労働者にとっては重要な書類なのである。

「日本では労働契約書を交わす習慣がない」とドイツ人に教えると皆ビックリする。

「労働契約書がなかったら、企業は社員に対して要求をどんどん増やすことができるじゃないか。それでは過大な要求に歯止めをかけることができない」と言うのだ。

日本企業で社員の行動を律するのは、労働契約書ではなく、上司や同僚との信頼関係だ。ドイツは「性悪説」に基づく契約社会であり、日本は「性善説」に基づく信頼社会なのである。

日本では「大半の人はルールを破らない」という性善説(信頼)が社会の基盤となっているが、ドイツでは「書面にして制裁措置を決めておかないと、必ずルールは破られる」という性悪説(契約)が基盤となっている。

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