次期FRB議長、ウォーシュ氏だと市場不安定化 タカ派とも言い切れない「微妙な発言」を読む

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残る候補はウォーシュ元FRB理事である。ウォーシュ氏はアウトサイダーではない点でコーン氏よりも有利な立場にあるとみられる。しかし同氏は抜本的なFRB改革を主張しており、それがかえって不確実性の源泉となりうるのではないかという懸念がある。ウォーシュ氏の改革案は、次のとおりである。

(1) インフレ目標の見直し

ウォーシュ氏は、長期に2%を達成するという現在のインフレ目標に否定的である。2%という水準が厳密すぎるとし、許容可能なレンジを設定する考えを示している。加えてウォーシュ氏は、2%ではなく1~2%の間の水準を目標として提唱している。

なお、現在のインフレ目標は「長期」に達成されると考えられているが、ウォーシュ氏は「数年間という中期」で達成されるべきだと主張している。これはアカウンタビリティを意識したものである。

また、インフレ率を高める手段としてインフレ目標の水準を引き上げることには否定的である。2%のインフレ目標が達成できないのに、3%や4%に目標を引き上げても意味がないと考えているためである。

経済モデルや政策ルールに懐疑的、信用サイクル重視

(2) 賃金上昇への寛容さと、資源価格の重視

FRBは、労働市場がタイトになれば賃金が上昇し、いずれインフレ率も高まるという考えに基づいて利上げを正当化している。しかしウォーシュ氏は、労働市場の指標をインフレ率の決定要因と見なすべきではないという。長期にわたる停滞を経たあとの賃金上昇はキャッチアップにすぎず、1970年代のようにインフレが抑えられなくなる事態を招くわけではないという考え方である。同氏はむしろ、資源価格の動向に目を向けるべきだと主張している。

(3) 信用サイクルの重視

今の米金融政策では、ファイナンスや信用といった側面が重視されていないと批判している。信用サイクルは、ブームと崩壊を通じて金融政策運営に大きな課題を突き付けるため、実体経済のサイクルと同様に重視すべきであるという。

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