生保会社の信用力と動向−株価下落時の毀損リスク上昇、金利リスク低下だが総じて安定的《ムーディーズの業界分析》
金融機関グループ
AVP-アナリスト 三輪 昌彦
AVP-アナリスト 三輪 昌彦
■生命保険の事業環境
国内大手生命保険会社の2008年3月期決算において、解約失効率の低下がみられ、第三分野保険や年金保険の保有契約年換算保険料が堅調に推移しているケースも多く、国内生保事業の底堅さが確認された。
年金保険
最低保証型変額年金保険は、株式市場が低調であったこと、金融商品取引法の影響により銀行などの販売会社が商品販売に慎重になっていたことから、これまでよりも穏やかな成長にとどまった。しかし、最低保証型変額年金保険は、株式市場が不安定な時期こそ顧客にとっては購入しやすい商品であるため、販売状況が大きく悪化するとは想定しにくい。したがって、格付け上の注目点は、最低保証型変額年金保険の販売が不調になるかという点よりも、最低保証リスクの管理体制が機能し、保険料率水準と保険会社が引き受けるリスクとが整合しているかという点である。また、資本市場の不安定化はヘッジコストの上昇につながるため、収益性の状況も注視していきたい。
最近では、保証金額付きの特別勘定終身年金の販売が広がり始めている。特別勘定で運用を継続しながら、保険契約者は一定金額を生きている限り引き出すことができ、しかも引き出した金額の総額に最低保証がついている。一方、国内大手生命保険会社では、満期時の元本を保証するタイプの商品が主流となっている。それぞれの商品設計により実際の引受リスクは大きく異なるが、概して、前者の方がリスク管理は難しい。したがって、国内大手生命保険会社におけるリスクは、販売商品という点からは比較的保守的と考える。
第三分野保険
第三分野保険は穏やかに成長しており、今後の利益成長を支えていくものと考える。第三分野保険は、保有契約年換算保険料ベースでみると全体の2割程度であるが、危険差益ベースでは、全体の半分以上を占めるケースもあるとみられる。国内大手生保の基礎利益の7割以上が危険差益によるものであることから、第三分野保険の業績は利益基盤の維持という点で重要といえよう。
郵政民営化の影響は中期的な注目点
2007年10月1日に郵政民営化が実施され、その保険事業も株式会社かんぽ生命保険として事業活動を開始しているが、今のところ国内大手生命保険会社の事業環境における影響は限定的とみられる。
生命保険の事業環境
保険財務格付け | 見通し | |
日本生命 | Aa3 | 安定的 |
第一生命 | A1 | 安定的 |
明治安田生命 | A1 | 安定的 |
住友生命 | A2 | 安定的 |
大同生命 | A1 | 安定的 |
三井生命 | Baa2 | 安定的 |
富国生命 | A2 | 安定的 |
ソニー生命 | Aa3 | 安定的 |
太陽生命 | A1 | 安定的 |
朝日生命 | Baa3 | 安定的 |
ジブラルタ生命 | Aa3 | 安定的 |
AIGエジソン生命 | Aa2 | 安定的 |
損保ジャパンひまわり生命 | Aa3 | 安定的 |
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