公安部検事「児童ポルノDVD12枚購入」の醜態 2カ月停職・50万円罰金、身内に甘いとの声も

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この「別件の捜査」は現在も継続しているため、検察の捜査なのか、警察の捜査なのかすら「捜査に支障を来す可能性があるので答えられない」と、会見した山上秀明次席検事(東京地検ナンバーツーで広報を担当)は答えた。同じ理由で児童が18歳未満であるという以上のことはいえず、小学生か中学生か、男児か女児かは「コメントを差し控える」とした。

動機について山上次席検事は「性的好奇心に尽きる」とのみ回答。購入時点で、菅井検事に違法であるとの認識も「当然あった」とした。捜査目的ではなく、菅井検事が私的に購入したものだった。

菅井検事は東京地検の前は静岡地検、神戸地検、宮崎地検、長崎地検、仙台地検で検事を歴任。宮崎時代は同県初の裁判員裁判で主任検事を務めた。ほかの地検での余罪はないという。「ネットでの児童ポルノ動画閲覧などDVD以外の罪はないのか」という質問に、山上次席検事は「証拠上、立件できたのがDVD12枚である」とした。

決め手を欠く不祥事再発防止策

山上次席検事は「当庁コメント」として「職員がこのような事件を起こしたことは誠に遺憾であり、国民の皆様に深くお詫び申し上げます。当庁としては深刻に受け止め、改めて、このような事案が発生しないように職員に対する指導を徹底し、綱紀(国家を治める大本)の保持と再発防止に努めてまいります」との文章を2度読み上げた。

具体的な再発防止策について、「繰り返し指導することで各人の意識を高めることに尽きる。本件を機に指示文書を発出したが、年末など折に触れて同文書を発出する」と山上次席検事はコメントしたが、略式命令請求、2カ月の停職という甘い処分に加え、指導の徹底だけで不祥事の再発を防げるかは大いに疑問である。

いみじくも、「今回は職務外の私的な犯罪である」(山上次席検事)ことを理由に、菅井検事の上司への懲戒処分はいっさいしていないように、今回の不祥事はあくまでも私的な行為に関するものである。

検事のプライベートな時間で起きた不祥事を今後どう未然に防止していくのだろうか。「職員の意識向上」といった精神論だけでは、不祥事は繰り返されるおそれがある。捜査の専門機関もこればかりは「正直お手上げ」ということか。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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