「フォロワー数がすべて」に陥った30代の末路

堀江貴文氏から見えてくる「人気の本質」

Twitterは一部の人たちの間で大きな話題になり始めていたが、日本ではFacebookがほとんど認知されていないという時期だ。シンイチはTwitterに興味を持っている人たちを集めて、「ソーシャルパーティ」なるものを主催していた。私もシンイチに声をかけられて参加したことがある。

パーティ会場である薄暗いカラオケボックスに10人ほどが集まった。初対面の人がほとんどだ。驚いたことに、当時はまだ珍しかったiPhoneを参加者全員が持っており、Twitterの画面を見せ合いながら自己紹介をしていた。Twitterのフォロワー数を見せ合っているのだ。ソーシャルパーティでは、「フォロワー数=その人の価値」となるようだ。シンイチは参加者に、Twitterがいかに世界を変えるかを熱弁していた。私は、彼に聞いてみた。

:とにかくフォロワーを増やせというお話ですけど、多いと何がいいのですか?

:見える世界が違ってきます。

具体的に何が違ってくるんですか?

:確か、永井さんのフォロワーは1600人でしたよね(笑)。フォロワーが少ない人には、わからない世界があるんですよ。

シンイチは半笑いで自信たっぷりに言い切ったが、正直よくわからなかった。参加者はうなずきながら、彼の言葉を聞いている。納得できないと、納得するまで尋ねるのが私の性格。周囲の刺すような視線を感じながら質問を重ねた。

:抽象的でよくわからないのですが……。フォロワーが多ければいいなんて、申し訳ないけど、幻想なんじゃないですか?

:あのね、そもそもフォロワー1600人しかいない人に、そんなことを言われたくありません。オレは毎晩必ず2時間かけてTwitterで1000人をフォローして、フォロー返しで地道にフォロワー数を増やしているわけです。日中だってフォロワーの皆さんのために、『こんなものを食べた』『こんな人に会った』など、誰よりもまめにつぶやいています。あなたはどんな努力をしましたか? ソーシャルメディアはすべてを変えるんですよ! 私とフォロワー3万人とのつながりは、未来永劫、決して途切れません!

彼はイラッとした表情になり、甲高い声を張り上げた。やはり「フォロワー数=その人の価値」ということらしい。参加者していた女性の一人は、「私、フォロワー3000人いるけど、まだまだだな。頑張ろっと」と言いながら、熱く演説を続けるシンイチをあこがれの表情で見ていた。

フォロワー数は「あなたの価値」にならない

さて、シンイチはその後どうなったか。Twitter上でフォロワーの一人とささいなことで口論になり、そのトラブルがもとで炎上し、アカウントは閉鎖に追い込まれた。「決して途切れない」はずだったつながりは呆気なく途切れ、ソーシャル・メディア・コンサルタントは廃業に追い込まれた。

次ページ人を巻き込んで本を売る仕組み
キャリア・教育の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 野口悠紀雄「経済最前線の先を見る」
  • 食べれば世界がわかる!カレー経済圏
  • コロナ後を生き抜く
  • 井手隊長のラーメン見聞録
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
激震! エアライン・鉄道<br>どん底からの復活シナリオ

人の移動が収益源となる航空・鉄道業界は、新型コロナウイルスの直撃で事業構造の根本的な転換を迫られています。海外では航空と鉄道の一体的政策も始まる中、日本では何が起きるのか。今後の再編や合従連衡のシナリオを大胆に予測しました。

東洋経済education×ICT