汚染水漏れなど続出、”東電任せ”の限界 政府支援の行き着く先

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事故収束に向けた東電の姿勢にも疑念が付きまとう。廃炉・事故処理については「東電の責任」として原則、東電自身が費用を負担してきた。今年6月末までに東電が計上した1~4号機の廃炉費用は累計9579億円に及ぶ。すべて特別損失処理され、電気料金の原価算入は認められていない。自腹であるため、営利企業として費用を切り詰める意識が働いたとしても不思議はない。それが泥縄的な対策を増やし、抜本策を遅らせる要因になった可能性がある。

また、東電は今、福島の廃炉作業と同時に、柏崎刈羽原発の再稼働を最優先の経営課題としている。こうした分裂した状況が組織の機能不全を招き、事故収束対策を不完全にする要因になってはいないか。

自民党政権になっても東電任せが続いた

本来なら、東電の万全な事故対策を促すべく、指導・監視する立場にあるのが政府であり、規制当局の原子力規制委員会だ。しかし、自民党政権になっても、政府は福島では東電任せを続けた。規制委も、「(福島原発では)お化け屋敷のようにいろんなことが起こる」(田中俊一委員長)とひとごとのような批評は出しても、肝心の監視体制ではマンパワー不足を印象づけるのみだった。

結局、国際社会が憂慮する事態を招き、政府は国費投入拡大に追い込まれた。これまでも福島第一の廃炉支援として計977億円の予算を計上してきたが、遠隔操作機器などの研究開発費が中心だった。新たな国費は、「凍土式遮水壁」などの汚染水対策としてまず13年度予備費から数百億円規模が緊急支出される見込み。14年度予算の概算要求でも、13年度の87億円を大幅に上回る廃炉対策費が想定される。東電は「国の支援はたいへんありがたい」(廣瀬直己社長)と歓迎している。

廃炉費用を料金上乗せへ

国費投入とは別の“画期的支援策”も導入されようとしている。廃炉会計制度の見直しだ。原発の運転終了後も安全管理に必要な設備の資産計上を認め、毎年の減価償却費を料金原価に算入できるようにするもので、早ければ年内にも導入される。

東電が特損処理してきた廃炉費用には、燃料デブリ対策費用2500億円や70万トン分までのタンク(現容量39万トン)の建造費用などが前もって織り込まれているが、目下懸案の遮水壁を含め、想定外の新規投資が相次ぐ公算は大きい。制度改定後はその償却費用を電気料金へ上乗せできる。追加リストラなどの条件はつくだろうが、廃炉費用を織り込んだ値上げ申請に進む可能性は高い。

廃炉費用が自腹でなくなったとき、東電の姿勢にどんな変化が生じるのか。26日の緊急会見で東電は、多核種除去装置「アルプス」の増設に言及。汚染水対策の加速は最優先だが、今後30年以上に及ぶ廃炉過程では、電気料金や国費が必要以上に膨らむことがないよう対策の費用対効果の検証が必要だ。国会を含め、監視体制の強化が求められる。

週刊東洋経済2013年9月7日号

中村 稔 東洋経済 編集委員
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