スイフトスポーツが「3ナンバー化」した理由 スズキの小型車にこもる世界戦略を読み解く

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しかもこの1.4Lターボエンジンは、標準型スイフトに積まれている1L3気筒ターボと近い関係にある。エンジン内のシリンダーボア(内径)の数字は73mmで共通となっており、ストローク(行程)を1Lは79.4mm、1.4Lは81.4mmと微妙に変えるとともにシリンダー数を変えることで、2つのエンジンを生み出している。

スイフトスポーツのエンジン

エンジンの型式名も1.4LターボはK14C、1LターボはK10C型であり、同じ系列であることがわかる。さらに標準型スイフトに用意される自然吸気の1.2L4気筒もK12C型であり、ボアの数字も同じだ。

過去2世代のスイフトスポーツは、いずれも自然吸気の1.6L4気筒を積んでいた。こちらの形式名はM16Aであり、2000年登場の初代スイフトに積まれたM13A型をルーツとする、1世代前のユニットだ。ターボ化と同時にエンジンの世代交代を果たしたことにもなる。

ホットハッチと呼ばれる高性能ハッチバックは欧州で人気が高い。その欧州では、いわゆるダウンサイジングターボがトレンドになっている。欧州の道は日本と比べると発進停止が少なく、一度街を出れば次の街まで相応のスピードで飛ばせるという場面も多い。こうした道路状況ではダウンサイジングターボのほうが高性能と低燃費を両立しやすい。

よってこの分野の先導役を務めたフォルクスワーゲンのゴルフ/ポロGTIをはじめ、多くのブランドのホットハッチがターボエンジンを積んでいる。スイフトスポーツのターボ化はこの点からも納得できる。

日本よりも世界を見つめた戦略か

トランスミッションについては、日本では6速のMT(マニュアル)とAT(オートマチック)が用意される。2ペダルについては先々代が4速AT、先代がCVT(無段変速機)だったから、2回連続で変更したことになる。

日本では多くの車種に搭載されているCVTだが、このトランスミッションは「ラバーバンドフィール」と揶揄される直結感の薄い運転感覚に加え、大きな変速比を取りにくいことから、鋭い加速や高速燃費が重視される欧州では好まれない。

さらにCVTはプーリーをスチールベルトで回すという構造上、大荷重も苦手とすることから、過酷な使用が想定される新興国にも向いているとは言いがたい。軽量かつ低速移動が多いスクーターや軽自動車にふさわしい。

スズキはMT、MTを2ペダル化したAGS、CVT、そしてATと、会社の規模を考えれば多くのトランスミッションを使っている。以前エンジニアの方に聞いたところ、グローバル展開する小型車では、CVT以外を主力としていきたいとのことだった。

その言葉を思い出してスイフトのスペックを見ると、CVTは標準車のガソリン車とマイルドハイブリッド車に使っているだけで、スイフトスポーツ以外に1Lターボ車もATを組み合わせ、今年7月に追加されたフルハイブリッド車はAGSを採用している。CVT比率が低くなっていることがわかる。

日本よりも世界のことを見て開発されたことが濃厚に伝わってくる新型スイフトスポーツ。日本のクルマ好きから見ると残念に思える部分があるかもしれないが、日本生まれのホットハッチが本気で世界に戦いを挑む姿は頼もしさを感じる。欧州などでの人気が得られればなおさら喜ばしい。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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