「安倍改憲」が支持率の回復で息を吹き返した 北朝鮮危機に民進党新体制も首相の追い風に
ただ、「安倍改憲」の2本柱となる(1)不戦と戦力不保持をうたった憲法9条1、2項を維持しての自衛隊明文化、(2)高等教育の無償化については、石破氏らが「自衛隊の存在をめぐる憲法上の矛盾を固定化することになる」と異論を唱える。さらに、教育無償化についても財源問題などで反対論があり、簡単に党内論議が収束する状況ではない。
にもかかわらず、来年通常国会での改憲発議に現実味を与えたのは、国会での改憲協議の野党側の主役となる民進党の対応の変化だ。蓮舫代表をトップとした前執行部は「安倍政権下での改憲には反対」という、いわば"門前払い"の対応だったが、前原代表は「国会での改憲論議にはきちんと対応すべきだ」というのが持論だ。
党内保守派のリーダーでもある前原氏はもともと改憲派で、過去に9条見直しや教育無償化を唱えてきた経緯もある。早期改憲に慎重論を唱える公明党は「野党第1党の理解と協力を得ないで多数派による改憲発議を強行することは認められない」(幹部)と繰り返すが、「前原代表が改憲論議に協力すれば、反対する理由がなくなる」(同)ということにもなる。
改憲勢力の小池新党参戦で「3分の2」維持も
もちろん、自民党内でも「憲法改正は最後は国民投票で決まるので、安倍改憲を強引に進めるのはリスクが大きい」(幹部)との声は根強い。「発議の前に改憲を争点とした解散・総選挙で国民の信を問うことが政治の王道」(長老)との指摘もある。
ただ、次期衆院選の構図を考えると、「衆院選後も改憲勢力3分の2を維持できる可能性がある」(維新幹部)との分析もある。自民党が毎月実施しているとされる事前情勢調査では、「魔の2回生」らの苦戦などで「最低でも30議席減、最悪なら50議席減もありうる」との結果が出ているが、民進党の政党支持率がさらに低迷しているため、小池百合子都知事を看板とする「小池新党」が自民議席減の受け皿になるとの見方が支配的だ。
大阪の地域政党から国政進出を果たした日本維新の会の選挙結果を踏まえれば、次期衆院選に「小池新党」が本格参戦した場合は「30議席以上の獲得は確実」(選挙アナリスト)との見方が多い。ただ、「小池新党」は維新と同様に憲法改正には積極的とみられている。小池氏が「バリバリの改憲派」(側近)だからだ。となれば、公明、維新両党が現状維持かそれに近い議席を獲得すれば、改憲勢力での自民の議席減は小池新党が補う可能性も小さくない。だからこそ首相は小池新党の出方を見極めながら解散時期を探るとみられる。
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