ホンダがN-BOXの好調を単純に喜べない事情 販売現場で懸念される「ヒット車傾注」の弊害

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ホンダにひるがえれば軽自動車であるN-BOXの販売比率が高まると、ホンダや販売店の利益面に影響を及ぼすかもしれない。軽自動車は1台当たりの粗利が普通乗用車よりも低いのが一般的。加えて、販売店の利益を下支えしている法定点検や整備など、アフターメンテナンス部門の収益が落ちる可能性もある。小さな車は購入後にかかるさまざまなランニングコストが安いが、裏返せば、販売店の整備収入も低下しかねない。

軽自動車を買うユーザーの中には維持管理費にもシビアな人も少なくなく、点検や車検をホンダ販売店に持っていかず、格安業者やガソリンスタンドなどへ出すケースも少なくないという。「そもそもホンダ販売店は、一見客のメンテナンス需要を囲い込むのがトヨタ系などに比べて弱い」と自動車販売業界ではささやかれている。

同時期に発売開始のほかの車種がかすむおそれ

2代目N-BOXの投入時期は、ホンダの国内乗用車販売にとっての間の悪さもある。ホンダは9月下旬、久しぶりに国内に復活する新型「シビック」の発売を予定している(7月に発表済み)のに加え、待望のハイブリッド仕様が追加されるといわれるステップワゴンのマイナーチェンジ(一部改良)も同時期に実施されるとうわさされている。これらの新車効果が、超ヒット車種である2代目N-BOXの販売好調の陰にかすむ可能性もあるのだ。

現行ステップワゴンは、真っ向から競合するトヨタのノアやヴォクシー、日産自動車の「セレナ」に対して苦戦が目立っていた。2013年暦年のステップワゴンは月販約5200台を売っていたのに対し、2017年上半期(1~6月)は月販約3600台まで低下。セレナの同約9000台、ヴォクシー同約7500台、ノア同約4500台という状況は、現行ステップワゴンのデザインが不評だったのに加えて、ハイブリッド仕様がないことが致命的だったと指摘されていた。ホンダの販売現場が2代目N-BOXに注力する中でステップワゴンの反撃の手が、本来期待していたほど強くならないかもしれない。

2代目N-BOXはダイハツやスズキといった競合軽自動車メーカーのユーザー以外にも、普通乗用車をメインとする競合社のユーザーを奪い取っていくだろう。ただ、ホンダ販売現場の内なるひそかな悩みは静かに進行していくはずだ。

小林 敦志 フリー編集記者

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こばやし あつし / Atsushi Kobayashi

某メーカー系ディーラーのセールスマンを経て、新車購入情報誌の編集部に入る。その後同誌の編集長を経て、現在はフリー編集者。

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