「運賃高すぎ」北総線の値下げは可能なのか 地元による安価な並行バス路線が好調
北総線の高額運賃に対しては、沿線住民グループによる北総線運賃引き下げ運動が活発に展開されてきた。2009年11月30日、京成電鉄と北総鉄道は、千葉県・関係自治体と運賃値下げのための補助金の受給で合意し、前提として北総線運賃について平均4.6%の値下げを実施することとなったが、それに伴う年間6億円の減収分は自治体と北総鉄道が折半することとなった。自治体側は3億円を北総鉄道に対する補助金として支給することとしたのである。
2010年7月17日、京成成田空港線が北総線と線路を共用する運行形態で開業したが、北総線の運賃体系は変更されず、京成上野駅―空港第2ビル駅・成田空港駅間では、京成成田空港線と、船橋経由の京成本線とで異なる運賃が導入された。
同区間の京成成田空港線(=北総線)経由64.1kmの普通運賃は1240円であるが、京成本線経由69.3kmの普通運賃は1030円である。一方、京成上野駅から41.2kmの印西牧の原駅までの普通運賃は1060円である。京成本線経由であれば、京成上野駅から成田空港駅まで行ける金額で、京成成田空港線経由では約28kmも距離が短い印西牧の原駅に行くことすらできないのである。
結果として、京成上野駅―成田空港駅の京成成田空港線経由は、JR線や高速バスと大差がない運賃に設定された一方、北総線内利用の場合は高額な運賃が維持された。京成成田空港線の運賃が、北総線運賃体系を変更しない形で決定されたことが、このような「逆転現象」を生んだといえる。
「北総線に頼らない足」確保へ
京成成田空港線開業の前には、沿線住民が運賃を認可した国を相手取って行政裁判を提起したが、2015年4月21日、最高裁判所は原告(沿線住民)による上告を退け、敗訴が確定した。現在は別の沿線住民による第2次行政訴訟が進行中である。なお、2015年3月末で期限を迎えた関係自治体による補助金支給が打ち切られたことに伴い、値下げ幅が縮小された
一方、千葉県が北総鉄道に対して、貸付金53億円の返済を5年間猶予し、その間の利息も免除することと引き換えに、通学定期券25%値下げを10年間継続することで合意された。しかし、他鉄道と比べて運賃が高額な状況は解消していない。成田新幹線やニュータウン構想の失敗のツケを一方的に沿線住民に負担させているとの批判も聞こえる。
北総線運賃問題解決の糸口がつかめない中、北総線に頼らない独自の交通手段を模索する運動が新たに立ち上がった。交通権学会の前田善弘氏と筆者が、沿線住民グループに国道 464号線を活用して千葉ニュータウンと新鎌ヶ谷駅を結ぶ路線バスの開設を提案したことがきっかけであった。前田氏は「住民のQOL(生活の質)を向上させ、『子や孫の代まで安心して暮らせる千葉ニュータウン』を実現させるために、バス運行という方法がある」と説き、路線バス開設に向けたバス社会実験を提案した。
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