民進党、「予定調和」の前原新体制を襲う試練 「党再生」より「野党再編」が加速している

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小池新党構想で一躍「時の人」となった若狭氏は、前原氏が新代表就任時の記者会見で小池新党との連携に含みを持たせたことについては、「民進党は今後衰退していく。新党として協力することは考えていない」と記者団に否定的なコメントを出した。

若狭氏はこれまで、民進党を離党した細野豪志元環境相や長島昭久元防衛副大臣らと新党立ち上げで意見調整を続けており、民進党内では枝野氏らが次期衆院選で「対立候補を立てるべきだ」と厳しい対応を主張している。そのため、前原氏も当面、連携に踏み出せる環境ではない。

ただ、代表選では国会議員8人があえて無効票を投じた。共産党との共闘などに不満を持つ「離党予備軍」とされ、「小池新党」結成時には離党して参加するとの見方も少なくない。若狭氏は「10人以上の新党参加者を見込んでいる」と語っており、前原氏にとっても今後の党運営での"頭痛の種"となりそうだ。

試練を克服できなければ「最後の代表」の汚名も

「党再生のラストチャンス」(岡田克也元代表)に代表となった前原氏は就任あいさつで、まず「非常に厳しい船出だ」と自戒の念を語った上で、「この日が政治の変わり目だったと後で言われるように頑張ろう」と再び政権党となることへの決意を強調した。しかし、世論調査の厳しい結果が示すように、国民の信頼を取り戻す道はまったく見えてこない。

その第1ステップともなる次期衆院選で議席獲得を優先して共産党との共闘に踏み込めば、「有権者から『永遠の野党』を選択したみなされ、離党者が相次いで、野党再編どころか社民党と同じ道をたどる」(民進長老)ことになりかねない。しかし、野党共闘を見直して独自路線で選挙に臨めば、小池新党が「政権の受け皿」となる可能性が大きく、選挙後に前原氏の狙う「野党再編の中核」に脱皮するのも至難の業だ。

前原氏は代表選での投票直前の演説の最後に「皆さんと一緒に、政権交代をジツ、ジツゲ…」とロレツが回らず「大事なところでかみました」と苦笑した。「退路を断って党再生に政治生命を賭ける」と繰り返した前原氏だが、野党第1党のリーダーとして相次ぐ試練を克服できなければ「2大政党の一翼」どころか「民進党の最後の代表」という汚名が待っている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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