民進党、「予定調和」の前原新体制を襲う試練 「党再生」より「野党再編」が加速している

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前原氏による新執行部人事の目玉は山尾氏の幹事長抜擢だ。党内では代表選で善戦した枝野氏の幹事長再登板も取り沙汰されていたが、前原氏は自らの党内グループに所属する山尾氏の起用を決断した。民主党時代も含め初の女性幹事長となる山尾氏は衆院当選2回で43歳という若手のホープだ。女性で40代前半の幹事長なら「清新さと党刷新への決意がアピールできる」(党幹部)との前原氏の狙いは明らかだ。

党内でも「次期衆院選など選挙の顔としては期待できる」(若手)と評価する声が出るが、党運営や国会対策、さらには選挙の司令塔という幹事長の重責を果たすには「経験も人脈も不足している」(党長老)ことは否定できず、蓮舫前代表以上に統率力への不安は拭えない。

しかも、山尾氏は昨年、同氏が支部長を務める政党支部の政治資金収支報告書でガソリン代支出での不適切な処理を指摘され「元公設秘書がやったこと」と苦しい言い訳に終始した過去がある。このため永田町や一部メディアでは「ガソリーヌ」という皮肉たっぷりのあだ名で呼ばれることも少なくない。野党第1党の幹事長は国会代表質問や予算委員会で政権追及の先頭に立つのが重要な役割だけに、自らの過去の不祥事を気にして持ち前の舌鋒が鈍るようだと、「幹事長失格」の烙印を押されかねない。

【追記】幹事長人事は党内で再検討が行われており、9月5日時点では流動的です。

前原氏は枝野代表代行、長妻選対委員長の他、リベラルグループの辻元清美・元国土交通副大臣を役員室長として執行部入りさせる。一方、前原陣営の選対本部長を務めた大島敦・元総務副大臣を枝野氏と横並びの代表代行に充てるとともに、政調会長に階猛・元総務政務官、国対委員長に松野頼久・元官房副長官をそれぞれ起用することで挙党体制重視の姿勢もアピールする。

「民共共闘」「小池新党との連携」が火種に

代表選での最大の争点だった次期衆院選での共産党との選挙共闘問題では、まず目前のトリプル補選への対応が焦点となる。これまでの党内調整では「党の主体性を維持したうえでの共産党との連携」といったあいまいな結論が想定されているという。

ただ、共闘維持を求める志位和夫・共産党委員長は前原氏への不信感を隠さず、その一方で民進党の最大の支持団体である連合の神津里季生会長は「目指す国家像が全く違う共産党と選挙で手を組むことはあり得ない」と繰り返している。前原氏ら共闘否定派と枝野氏ら共闘推進派との執行部内での調整も難航する可能性が大きい。

さらに、前原氏がこれまで主張してきた野党再編論も今後の党運営の"火種"になりそうだ。特に国政進出を目指してトリプル補選前の旗揚げも模索する、いわゆる「小池新党」との連携が当面の課題ともなる。民進党代表選直後の2日には、小池百合子東京都知事が側近の若狭勝衆院議員(無所属)と会談し、若狭氏を中心に「小池新党」を立ち上げる方針を確認した。席上、小池氏は「しがらみのない政治であるとか、大改革とか遂げられるような状況を国政でも作っていきたい」と意欲を示す一方で、新党結成については若狭氏に委ねる考えを強調した。

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