「駅ナカ書店」の売れ筋は、駅ソトと全然違う 通勤客が朝夕にチェック、回転速く即返品も
第5回と第4回も鉄道を舞台とした本となった。第4回は新書だが、それ以外はすべて文庫というのも同賞の特徴の一つである。
「選考対象の本としては、鉄道や駅にとらわれず、この数年では、広い意味での旅に関連した作品としています」(JR東日本リテールネット ブック課 西田哲也課長)。
選考方法は以下のとおりだ。ブックエキスプレスのスタッフが読んで面白かった本を集約して、各店舗から1冊、コメント付きで選定委員に推薦する。それに対し各店のスタッフがメールで1位から3位までを選んで投票し、上位のほうに高得点を割り振り、合計で点数が高かったものを大賞とする。ちなみに各店のスタッフは女性が多いという。
また、鉄道会社系書店では、文学賞の先行例として、京王電鉄の駅ナカや沿線にチェーンを展開する啓文堂書店による「啓文堂大賞」も見逃せない。同賞は、各出版社と啓文堂書店のジャンル担当の推薦により選定された10~15作品の候補作を、啓文堂書店全店で「候補作フェア」として1カ月間販売し、最もたくさん売れた作品を大賞受賞作とする(啓文堂書店HPより)。他のほとんどの文学賞と異なり、候補作品を絞った後、「売れた」という尺度が入っていることに特徴がある。2017年の受賞作を見ると以下のとおりとなる。
ビジネス書大賞 『自分を劇的に成長させる!PDCAノート』岡村拓朗
雑学文庫大賞 『今さら他人には聞けない疑問650』エンサイクロネット
時代小説文庫大賞『火喰鳥』今村翔吾
(文庫大賞、文芸書大賞は選考中)
「啓文堂さんは、町の特徴によって店ごとに売れる本の傾向が異なる印象があります。この駅周辺は古くからの住宅地で時代小説が売れるとか、別の駅では若い方が多くビジネス書が売れるとかです」(出版社営業担当)。
『定年後』が大賞を受賞したのは、大ターミナルに多く店を構え通勤客の多いブックエキスプレスと異なり、定年前後の方も多く住み、家の近くで本を買う人が多いという特徴の表れのようでもある。
駅ナカ書店の特徴は「回転が速い」
書店に限らないが、駅ナカの店では、「滞在時間が短く」「衝動買いが多い」傾向があると言われる。駅ナカ書店の売れ筋には何か特徴があるのだろうか。
一般の書店と異なるのは、多数の本がズラリと並べられた店頭を圧倒的多数の人が行き交っていることである。一方一般の書店では繁華街の大型店でも、道路に面した所に通常本は並べられない。するとどういうことが起きるか。
「うち(ブックエキスプレス)は話題書が売れて行く初速が速い。文庫の比率が高いことも特徴です」(前出西田さん)。
「駅ナカ書店さんは回転が速いので、売り間違えると大量の返品というしっぺ返しを食らう」(前出出版社営業担当)。
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