「駅ナカ書店」の売れ筋は、駅ソトと全然違う 通勤客が朝夕にチェック、回転速く即返品も

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たとえばエキュート上野店を見てみよう。「エキュート上野」は、JR上野駅の幾本ものホームをまたぐ橋上に広がる商業施設である。約70店舗が入っているが、フロアマップを見るとその中の店の一つ、ブックエキスプレス上野店の広さが目立つ。他の多くの店(飲食店が多い)の数倍、また比較的広い店舗の「ユニクロ」「キノクニヤ アントレ」と比べても約2倍の広さがある。また同フロアの他の店と合わせる形で7時30分から夜10時30分まで(日・祝日は夜10時00分まで)という営業時間も、書店としては異例の長さだ。

立川駅の駅ナカ商業施設「ecute(エキュート)」。JR東日本はエキュートを主要駅に展開している(撮影:梅谷秀司)

駅ナカを商業展開するのは、この十数年で大きく成長したビジネスモデルである。その中心を担ってきたのがJR東日本だ。同社は2000年に中期経営計画の中で「ステーションルネッサンス」というコンセプトを打ち出した。同社管内合計1日1600万人以上もの人が利用する駅を最大の経営資源と位置付けて、駅の魅力向上、高収益化を目指したのである。

それ以前にも東日本キヨスク(現・JR東日本リテールネット)により1996年駅の中での初めての大型書店となる「ブックガーデン上野」を開業。2005年にはJR東日本ステーションリテイリングにより世界初とも言われた改札内大型商業施設「エキュート大宮」を開業させている。

繰り返しとなるが、ブックエキスプレス以外にも駅ナカ書店は数多く存在する。だが、以上のような経緯を考慮すると、JR東日本グループ(JR東日本リテールネット)の運営するブックエキスプレスが賞にエキナカ書店大賞と名付けたのも、意気込みとしてうなずけるものがある。

エキナカ大賞の歴代受賞作は?

歴代のエキナカ書店大賞の受賞作を見てみよう。7月に発表された第9回の受賞作は阿川大樹の『終電の神様』。満員の最終電車が、事故で運転を見合わせる。この運転停止が、それぞれの人生を背負った人たちにとって、思いがけないターニングポイントとなる、といったミステリー7話からなる短編集だ。優しい驚きに満ちていて、確かに会社帰りに買って、電車の中で読むのに向いている。

さらに歴代受賞作をさかのぼると、以下のとおりとなる。

第8回(2017年)『ロボット・イン・ザ・ガーデン』デボラ・インストール
第7回(2016年)『七時間半』獅子文六
第6回(2015年)『扼殺のロンド』小島正樹
第5回(2015年)『ペンギン鉄道なくしもの係』名取佐和子
第4回(2014年)『[図解]電車通勤の作法』田中一郎
第3回(2014年)『Iターン』福澤徹三
第2回(2013年)『ミッドナイト・ラン!』樋口明雄
第1回(2013年)『カミングアウト』高殿円

『ロボット~』は、英国版「ドラえもん」といえる小説。『七時間半』は、1960年の作品を「ちくま文庫」が復刊したもの。東京―大阪が七時間半かかっていた時代、特急列車「ちどり」を舞台としたドタバタ劇だ。獅子文六は、大衆娯楽向け小説で数々のヒット作を連発していたが、近年忘れられた存在となっていた。彼の諸作品は現在再びブームともなっている。

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