――それだけ競争は熾烈。
バカロレアは1科目20点満点で、試験時間は4時間。飲み物や食べ物の持ち込みは可能だが、音の出るモノはダメとか。近年は8万人近くが希望の大学に登録できなくなり、2022年ごろまで受験者が増えていく見通し。日本人から見れば悩ましいというよりもうらやましい関門だが、合格後に入学する大学が少ないので熾烈さが増す。さらに上級校での進級がまた大変で、スーパーエリートや大人気の医学部などの試験のあり方について「ぜいたくな悩み」の論争が盛んだ。
成熟した大人文化の国、フランス
――隣国ドイツとは別?
ドイツは出生率が低いまま。フランス女性の場合は働きながら子どもを産み育て、それが好循環になっていて、ずいぶん違う。
――同時に、フランス人の生き方としてセンシュアリティ(官能志向)を評価されていますね。
フランスは男女のカップル(対になる他者)の文化を軸に考える国柄。「成熟した大人文化の国」であり、子どもにとって大人はあこがれの存在であるものの、決して甘やかしてくれない。子どもにとって親は成長の手本になるが、大人と子どもはしっかり区別されている。これがフランスの成熟した大人文化を作り出す。カップル単位で楽しむとなれば、文化も経済もかなり違ってくる。大人感覚による美的価値体系の経済形態が官能経済なのだ。
愛が人生の中で一番だと、高らかに唱える。最初にアムールありきと。だが、それは必ずしも男女間の愛でなくてもいい。2年近く前の同時多発テロ発生時にパリにいたが、メディアも現場も愛を確かめ合う人々であふれていた。人生が突発的に終わることの不条理に対する思いやり。そこに尽きるようだ。愛を伝え合う。フランス人はいつも意識して、口に出して表現する。
――フランス人の人生観の根底にセンシュアリティが流れていると。
官能より「感悩」と表現するほうがしっくりくる。つねに自他共に心地よくなることを心掛ける。似た言葉にセクシュアルがあるが、この場合、男女とも色気が伴う。もっと深く複雑で、それを混ぜたような感覚がセンシュアリティ。大人の魅力といっていい。センシュアリティを日本語文学でいえば、陰翳(いんえい)礼讃のイメージだ。
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