東急豪華列車「JR横浜駅発着」になったワケ

東海道線と伊豆急線を走る列車と東急の関係

だから、この列車は東急が伊豆急の車両を貸し切って運行する団体列車となり、ゆえに営業面は全面的に東京急行電鉄が担う。そのため、起点になる駅も東横線接続の横浜が選ばれたのだ。

そして、この青い車体、散りばめられた金色の飾りや文字、リビングのような家具調度をしつらえた独特の車内を手掛けたのが、JR九州で「ななつ星in九州」を生み出した工業デザイナーの水戸岡鋭治氏である。したがって列車の車内外は「ななつ星」と相通じている。

今回のTHE ROYAL EXPRESSは、水戸岡デザイン列車の東京圏デビューである。25年前に初めて鉄道車両に携わったのはJR九州だったが、その後、各地の依頼に応じて、あちこちに一目でそれとわかる車両が登場した。しかし首都圏も都市部となると、これが初お目見えだ。

各地に走る水戸岡流列車をリサーチした結論として、東急・伊豆急の関係者が水戸岡氏の事務所を訪れたのは、およそ2年前だった。「伊豆に活気を戻す列車を作りたい」

それに対して水戸岡氏は「思いきったことをやるなら参加する。JR九州で培った技術や設計、人脈を投じることになるから、中途半端に考えた列車なら参加しない。JR九州がソフトを独占しない理由はローカルの底上げにある。だから、JR九州を超える進化を目指す必要がある」と返答したと振り返る。いつもの条件だったが、おそらく東急・伊豆急関係者も、その心意気に触発されたことと思う。

結果、8両編成をフルに使って国内最大級、定員100人のレストランを有する列車が具体化してゆく。料理を提供するキッチンカーを真ん中に、前後に食事専用の車両2両、それからテーブル付き座席車両と、マルチカー1両を加えたプランが作られてゆく。

地元の装飾を配置

2号車の上り方は海側に向けたいすとソファで構成、床の一部は菱形模様の寄木で意匠を凝らしている(写真:レイルマンフォトオフィス)

注目され、憧れを誘う列車とするため、また、JR九州の先例を超えてゆくため、このマルチカーの天井には金の電解着色を施し、組子(これは「ななつ星」から採用された福岡県大川の伝統工芸)が電照パネルの光を反射する、他のどこにもない贅沢な雰囲気とした。床には箱根の寄木細工や、最上級車両の天井ドームには伊豆のメーカーによるステンドグラスを巡らしている。実際のところ、各地に展開された“水戸岡デザイン”の列車は、一人の人間が編み出すものとして共通項が多いが、中に一つ、二つと土地のものを採り入れると、象徴的な存在になる。

現在、各地から人気が伝わってくる“レストラン列車”だが、しっかり改装して専用車両を作り上げ、従来のお弁当の枠に収まらない形で料理を提供した最初の列車、また、編成の中に食堂車があるという感覚でなく、列車そのものがレストランという形を築いた最初が、2013年に登場した肥薩おれんじ鉄道の「おれんじ食堂」。そして、その車両の内外装を手掛けたのも水戸岡鋭治氏だった。

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