欧州「怒りの反観光デモ」は京都でも起きるか

バルセロナ・ベネチア住民が訴えたこと

では、やはり観光産業に抗議するデモが起きたと報じられたベネチアはどうでしょう。

ベネチアに訪れる観光客は、人口の「400倍」

こちらも大前提として、京都や東京の観光と比較しておきましょう。市街地のあるベネチア市街の人口は、第2次大戦後3分の1にまで減少して、現在5万5000人となっています。日本でいえば、佐渡島とほぼ同じです。その島に訪れる外国人観光客は、なんと年間2200万人。現在の日本にやってくる外国人観光客とほぼ同じくらいの数の観光客を受け入れています。

こちらも、京都や東京が置かれた状況とは比較しようがない、かなり特殊な状況だということがうかがえます。

ベネチアもバルセロナと同様に、ホテルの増加によって地価や家賃が高騰するという問題がもう何年も続いています。また、新たなホテル建設計画を進めるため、住居エリアも少なくなってきています。佐渡島に日本中の外国人観光客が押し寄せれば、このような問題も当然起こってくることは容易に想像していただけるでしょう。

そして、ベネチアの住民をもうひとつ苦しめているのが、巨大クルーズ船問題です。

ベネチアの観光は、莫大な数の観光客が巨大クルーズ船に乗って一度に到着し、2~3時間集中的に観光をするというスタイルです。そのため、到着直後から数時間、有名な観光スポットを中心に過剰に混雑します。これは、昭和の日本の国内観光でよく見られた「マス格安観光」の弊害といえるでしょう。

混雑する割には滞在時間が短く、宿泊してくれるわけでもないので、ベネチアにはおカネがあまり落ちない。住民の負担が大きい割には稼げないという「負のスパイラル」に陥ってしまっているのです。

実際、ベネチア住民の主張をみると、巨大クルーズ船の乗り入れを制限してほしいという運動を展開しています。このことからも、「日帰り観光」に強固に反発していることがわかります。

要するにベネチア住民は、「量」をさばくような観光をやめて、「質」を追求する観光戦略への転換を求めているのです。

確かに、「マス向け観光」には大きな問題があります。数時間しか滞在せず、買い物と記念撮影だけして嵐のように去っていくので、その土地に対する配慮は期待できません。ベネチアでは、マナー違反をする観光客のために警察も増員しています。ローマも噴水に入ったりする人、歩き飲酒などの規制を強化しています。

このように住民との大きなハレーションを引き起こす「マス格安観光」は国連世界観光機関(UNWTO)も問題視していて、2017年を「持続可能な観光国際年」としています。

さて、バルセロナやベネチアの住民たちが単に「観光客が増えると住民が住みにくくなるから」という理由で抗議をしているわけではないことがわかっていただけたと思います。

住民が抗議しているのは、「負担」と「利益」の配分です。全面的に負担を負っているベネチア住民にあまり利益が落ちず、たとえばクルーズ会社が大した負担も負わずに儲けている構造に問題があるのです。

これは京都とJR東海の関係にも言える問題かもしれません。JR東海は明らかに「京都へ行こう」というキャンペーンで大きく稼いでいます。しかし、JR東海は京都にいくら還元しているでしょうか。おカネを落としてくれる人を運んでいるから貢献していると言えるかもしれませんが、京都住民の負担でJR東海が大きく儲けているのは明らかです。

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