欧州「怒りの反観光デモ」は京都でも起きるか バルセロナ・ベネチア住民が訴えたこと
ここでは、バルセロナとベネチアを、京都と比較する形で議論を進めていきます。
人口の「20倍」の観光客が押し寄せる
まず、大前提としてバルセロナの場合、160万人の住民に対して年間3200万人もの観光客が訪れていることに注目すべきです。これは日本にやってくる訪日外国人観光客数を大きく上回る数です。
さらにいえば、スペインの人口は4650万人ですが、2016年に7560万人の観光客が訪れています。一方の日本は、1億2700万人の人口に対して、まだ2400万人しか訪れていません。
160万人といえば、日本でいえば福岡市の人口とほぼ同じです。博多に現在の訪日外国人観光客のすべてが押し寄せたことを想像してみれば、バルセロナが置かれた状況が、いまの東京や京都、大阪という都市の状況と単純に比較できないことがよくわかっていただけるのではないでしょうか。
次に、冒頭で紹介したバルセロナの報道をみてみると、どのメディアも強調しているポイントがあることに気づきます。
それは、住民は観光客に対して怒りや不満を感じているわけではなく、バルセロナ市側の観光戦略、つまり行政の対策について抗議しているということです。そのなかでも最大の問題とされているのが、ホテルと住宅です。
現在、バルセロナには7000軒の違法民泊があると言われています。ホテルの経営に大きな影響が出ているのはもちろんですが、本来はホテルに落とされるべき金額が、違法民泊によって安くなってしまっているので、バルセロナ自体に落ちるおカネも少なくなってしまっています。
また、違法民泊を開業する参入者が増えたことで、地価が暴騰、家賃も上昇しています。極端なケースでは、民泊で儲けようという人が家賃を吊り上げて住民を追い払い、どんどん「民泊化」を進める動きもあります。
バルセロナ市民の窮状がよくわかっていただけたと思いますが、ここで少し冷静になって考えてみれば、これは「観光」の問題ではないことがわかります。
Airbnbという「住居」を「ホテル」に置き換えてしまう新しい時代のビジネスモデルの台頭による弊害と、それをどう規制していくのかという対策が遅れていることが問題の根源です。実際、バルセロナ市がようやく最近になって、新しいホテルの建設の制限と、違法民泊問題に取り組むようになりました。
要するに、違法行為に対する行政の規制が後手にまわっているという問題と「都市の観光地化」に対する反対論が混同されてしまっているのが、バルセロナの現状なのです。
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