入り口はポップな感じなので入ってみたら、けっこうディープなものを見せられる、というのは、僕自身がいちばん好きな映画体験なんです。そういう意味では、新房さんの演出はかなりとんがっていてディープ。それが許されるのが今のアニメ映画のいいところだなと思います。
――今回の題材としてはいかがでしたか?
新房:自分としてはやったことがないジャンルだったので。そういう意味で楽しかったですね。知っているジャンルばかりやっても仕方ない。それは自分だけでなく、アニメ制作会社「シャフト」という会社の気質というか、社長の久保田光俊さんたちの「新しいものならチャレンジしてみたい」というマインドがいい方向に働いたと思っています。
「思ってたのと違った」映画体験をしてもらいたい
――新房監督にとって、今回、東宝さんと組んだというのはいかがでしたか?
新房:かなり昔にやったビデオ作品は、あれ東宝じゃなかったかな。
川村:それこそ(押井守監督の1984年作)『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』などは東宝だし、長谷川和彦監督の『太陽を盗んだ男』や(橋口亮輔監督の1995年作)『渚のシンドバッド』も東宝作品。東宝は不思議な会社で、大メジャーの印象がある一方で、意外と懐が深いというか、時代時代でいろんなものをやってきて、ヒットを出している会社だと思います。
東宝の夏のアニメというと宮崎駿監督の印象がありますが、その宮崎監督ですら最後までずっと攻めた作品を作り続けてきた。先輩がそうやって攻めているのに、われわれがやらなくてどうする、と思っています。
――宮崎アニメはある時期から、物語の面白さ以上に、アニメならではの視覚の面白さを追求していったように思います。
川村:視覚の描写を攻めたいからこそ、僕はハリウッドの王道的な脚本作りを目指しています。脚本上でのカタルシスや構成をしっかりと丁寧に作り込んでさえいれば、あとはどれだけ新しい表現で遊んでも壊れないと。そう思って作品を作っています。
――去年の8月に『君の名は。』が公開され、今年の8月は『打ち上げ花火~』が公開されることは意識的なのでしょうか? それこそ3月が『ドラえもん』、7月が『ポケモン』といったように、8月にはこういった青春映画的なアニメを公開するというラインを考えているのでしょうか?
川村:たぶんそういうのは考えていないと思います。単純に7月が4番バッターだらけなので、われわれが6番バッターくらいを担うということで……。
――でも今の東宝の勢いなら、8月のラインも4番バッターにしてやろうという気持ちがあるのでは?
川村:ただ、打とう打とうと力みすぎると三振するんで。絶えず鋭角なスイング(作品)を目指す、というのは僕の中ではあります。なので特にそんな気負いはなかったと思いますけど……。新房さんはどうですか?
新房:ないです(笑)。
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