アメリカ株は「嵐の前の静けさ」かもしれない 北朝鮮以外にもリスクがある
モルガン・スタンレーのストラテジストらによると、このようにボラティリティの低位安定に賭ける取引が大量に行われているため、わずかな相場変動によってこれらの一部が巻き戻しを余儀なくされ、金融システムに衝撃波が走る可能性もある。
ボラティリティの世界では、日々の変動率が重要だ。なぜなら上場型商品の多くは変動率に基づいて毎日リバランス(資産配分の調整)を繰り返し、大きな変動があれば自動的に何かを売る必要が生じるからだ。
「低いボラティリティが高いリスクを生み出すのはこのためだ」とモルガン・スタンレーの定量デリバティブ・ストラテジスト、クリストファー・メトリ氏は言う。
メトリ氏の推計では、VIX指数が12ポイント上昇すると、S&P500種総合株価指数は3.5%下がる可能性がある。
投資家を警戒させているのは、ボラティリティ上昇の可能性だけではない。英国の欧州連合(EU)離脱が混乱状態に陥る恐れもあれば、カタール危機が制御不能になって石油価格に影響を及ぼすことも考えられる。来年退任するイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の後任を巡る思惑ですら、市場を不安定化させかねない。
コンサルタント会社、インターナショナル・eケムのポール・ホッジズ会長は「現在の低ボラティリティは嵐の前の静けさであり、企業が活動している現実世界、あるいは拡大しつつある大きな不確実性を反映していない」と語る。
予想外の結果を招く可能性も
中央銀行が間もなく大規模な金融緩和を解消し始めると、予想外の結果を招く可能性もある。
また、大きなリスクの1つとして、株式指数に連動するパッシブ型ファンドが世界の株式市場に及ぼす影響の拡大が挙げられる。
S&P総合500種構成銘柄のうち、パッシブファンドが保有する割合は2008年の世界金融危機当時から約2倍の37%に達している。相場が急落した際、大手パッシブファンドの解約が下落に拍車を掛ける恐れがある。
英国を拠点とする大手債券ファンドの営業責任者によると、新興国資産に投資するETFに突如解約が殺到する事態を見据え、安値で株を拾えるように資金を確保している顧客もいる。
「市場はどんなリスクを見落としているのか、という問い合わせが数多く寄せられ、夜もおちおち眠れない」と、この責任者は話した。
(Saikat Chatterjee記者 Vikram Subhedar記者)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら