勇気溢れるカニに尽くした、最大限の礼儀
私は今回のカニとの戦いで、多くのことを学んだ。自分は出来心のつもりでも、相手にとっては一世一代の大切なこと(カニにとっては産卵)があるのだということ。また安易に自然に手を出すことによる、手痛いしっぺ返しの危険を人間が学ぶ日はほとんどど来ない、ということ。多くの戦争が、相手を侮ることから安易な軍事力行使に繋がり開始されるということ。
そして何よりも私はカニの勇気に感動した。私は彼女の22000倍だったが、彼女は私の大きな手を瞬時にとらえ、私がカニに離してくれるよう頼んでも一向に攻撃の手を緩めない。この彼女の大きく見開いた目には、我が子を守る、という悲壮な決意が漂っている。110キロの巨体相手に、5グラムの母親が挑んだ戦い。私はその子を守るための勇気に感動し、丁度最近出産直後の子供を放置して殺害、みたいなニュースが多い人間界と比べて、このお母さんカニの愛情と勇気はいかに尊いものか。
“敵ながら(というか、カニながら)、あっぱれ”。私は自身の軽率な行動をわびつつカニさんを海辺まで丁重にエスコートし、波打ち際の岩の傍というカニさん本来の居場所までご送迎差し上げることで怒りのハサミを下していただいた。
そして香港にしては珍しく輝く星空と三日月を眺めながら、カニさんの子供の幸せな人生にそっと祈りを捧げた。“達者でな、母さんに親孝行しろよ”と。
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