JR九州、鉄路被災でも観光列車維持に大奮闘

相次ぐ自然災害を乗り越えられるか

7月5~6日に九州北部を襲った集中豪雨は、鉄道にも甚大な影響を与えた。久大本線・光岡―日田間で橋梁が流失したほか、日田彦山線でも63カ所で土砂が流入し、線路が流されるなどの被害が発生した。

集中豪雨により久大本線・光岡―日田間で橋梁が流失(記者撮影)

久大本線の橋梁流失の影響はJR九州にとって見過ごせないものだった。久大本線は九州でも指折りの人気観光地・由布院(湯布院)や「九州の小京都」と呼ばれる日田を沿線に抱える観光路線。ななつ星の運行ルートにも採用されている。

鉄路が被災したとはいえ、日田市も由布市も観光地としては何の影響も受けていない。集中豪雨から20日近く経った7月24日。学校が夏休みということもあって、日田市の人気観光スポット「豆田町商店街」は買い物を楽しむ観光客でにぎわっているように見えた。だが、日田市観光協会の担当者は「例年と比べればまだまだ」と話す。

昨年4月に起きた熊本地震の余波で観光客数が落ち込んだ。その影響もようやく薄れて、今年こそはと意気込んでいたときの豪雨だった。「町も道路も影響は受けていない。もっとPRしないと」と担当者は気を引き締める。

「ゆふいんの森」の予約が激減

年間400万人もの観光客が訪れる由布院。由布市の観光担当者は「駅前大通りの人手が減った。宿泊予約のキャンセルが増えないか気掛かり」と集中豪雨の影響を懸念する。

近年、由布院は外国、とりわけ台湾や中国、韓国など東アジアで高い人気を誇る。昨年は熊本地震の影響で国内客数が大幅に落ち込んだが、外国からの観光客は増え続け、前年比15%増の23万人を記録した。

一般的な由布院への交通アクセスは自動車やバスが多く、鉄道は1割にも満たない。だが、東アジアからの訪日客の間では、博多から特急「ゆふいんの森」に乗って、久留米から久大本線ルートで由布院に行くというスタイルが定着している。日によっては乗客の7~8割が訪日客ということもあるという。

そのゆふいんの森がピンチに陥った。集中豪雨で橋が流され、ルートが寸断されたため運休を余儀なくされた。JR九州は急きょ小倉、大分経由という迂回ルートを設定し、7月15日から運行を再開した。博多から由布院まで4時間30分を超え、所要時間は2倍以上になったものの、何とか由布院までのルートは確保した。

とはいえ、書き入れ時であるはずのお盆休みの予約状況は定員の3割程度にすぎない。JR九州のほかの観光列車の予約状況と比べても低い割合だ。「新しい運行スケジュールがお客様に浸透していないのではないか」(JR九州)。あるいは4時間を超える所要時間の長さが嫌がられたのかもしれない

外国人観光客にとって鉄道は由布院へのアクセスに欠かせない。鉄路の寸断によって、外国人観光客が由布院に来ないということになれば、観光が基幹産業の地域経済にとっては死活問題だ。

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