東レと東洋紡、エアバッグ生地で首位争奪戦 年率7%超の成長市場めぐって火花

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さらに、これまで他地域からの輸出で対応してきた米州でも新工場を立ち上げる。建設地はメキシコ中部のハリスコ州。100億円を投じて原糸・基布の一貫工場を建設中で、来年3月から操業を開始する予定。

オートリブなど欧米の大手エアバッグメーカーとの取引シェアを高めるには、北米での供給体制強化も不可欠だ。東レによると、北米の自動車に搭載されるエアバッグの多くは、人件費の安いメキシコで基布の裁断・縫製作業が行われているという。

このため、東レはメキシコに生産拠点を設け、同国内に集積するエアバッグメーカーの指定縫製工場に最小限の輸送コストで供給する。インドと同様、“地産地消”でシェア拡大を狙う戦略だ。

出資した原糸メーカーを戦略活用 

一方、東洋紡も海外での供給能力拡大が急ピッチ。同社は原糸を日本、基布を日本、中国、タイ、米国の4カ所で生産。このうちタイと米国は協力工場を活用してきたが、今後の事業拡大をにらみ、タイは今年初に工場を買い取って自社生産に切り換えた。

東洋紡は今年初、タイで協力会社から基布工場を買い取って自社生産化した。写真は開所式時の工場内風景(写真:東洋紡)

そのタイ工場では既存棟の拡張に加え、新棟も建設中で、最新鋭の織機を大量に導入して織布能力を増強。米国や中国も順次増設し、2020年度までに各地の織布能力を倍以上に引き上げる。また拠点のなかった欧州でも織布工場の新設を検討している。

こうした織布工場の増設と並行して取り組んでいるのが、原糸の現地調達化だ。東洋紡は2014年、エアバッグ原糸で世界2位の独PHP社へ2割出資して同社を関連会社化した。中国と北米については、日本から輸出していた原糸をPHPの現地工場からの調達品に順次切り替えている。輸送コストを削減し、コスト競争力を高めるための施策だ。

昨年度、東レのエアバッグ基布の事業売上高は400億円弱。2兆円を超える全社売上高から見ればまだ小粒だが、産業繊維分野ではおむつ用などの不織布と並ぶ成長のドライバーだ。東洋紡も、エアバッグ基布を産業マテリアル部門の最重点分野に位置つける。

中国勢をはじめとして、成長性が高いエアバッグ用基布への参入機会をうかがっているアジア繊維企業は多い。が、エアバックは命を守る安全部品。当然、基布メーカーには厳しい品質管理体制と信頼性が求められ、新規参入のハードルは高い。つまり、実績を積み重ねてきた日本企業がアジア勢に対して優位に戦える分野でもあるのだ。

そのエアバッグ基布でシェアを拡大すべく、世界で積極的な設備投資を推し進める東レと東洋紡。基布の世界トップサプライヤーの座を巡り、2社の競争はこれから一段とヒートアップしそうだ。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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