300万本突破!超人気「ドラクエⅪ」の舞台裏 「原点回帰」を徹底し、2機種発売で大ヒット
さらに、主人公は「勇者」であることも当初から決まっていたという。主人公が勇者なのは当たり前だという声もあるかもしれないが、実は『ドラクエⅤ』以降のシリーズでは必ずしもそうではない。今作では「主人公が勇者」という原点に立ち返り、味付けとして、悪魔の子として追われる身でもあるという設定も加えられた。
これらの方向性が決まったのは2013年ごろだが、早くも開発は行き詰まった。発売する機種はPS4を前提としていたが、当時はまだPS4は発売されておらず、どれだけ普及するかが未知数。発売しても採算が取れるかわからない状況だったからだ。そこで浮上したのが、2011年に発売され、すでに普及が進んでいた3DSとの同時発売だった。
3DS版を販売するメリットは収支面だけではなかった。ドラクエはそもそも「ドット絵」と呼ばれる解像度の低い2D画像から始まり、低い等身のグラフィックス、より立体的な3Dグラフィックスと進化してきた。その過程で、ドット絵と今の3Dが好きなユーザーに分かれていったという。
ファン歓喜、ドット絵が復活!
そこで、3DS版ではドラクエⅨに近い等身の3Dとドット絵の両方を採用し、任意に切り替えられるようにした。最新機種であるPS4版も合わせて3種類のグラフィックを用意することで、30周年としてふさわしい演出になるという算段だった。
「ドット絵と3Dの両方で動かせる試作品を作ったところ、非常に反響が大きかった。特に、堀井氏は『ええっ、こんなことできるの!?』と驚いていた」(三宅氏)
そうして2機種での展開が決まったが、当然ながら制作量は膨大なものとなった。一般的に、PS4での開発は前世代機のPS3の倍以上の開発人員が必要になるといわれている。
それに加えて、3DS版も3Dとドット絵の2つを作らなければいけない。さらに、PS4版と3DS版では家やタンスの配置を変えるなど、細かな調整も必要となった。
ゲーム開発の方法はさまざまだが、ドラクエの場合、先立つのが堀井氏によるシナリオだ。それに合わせる形でキャラクターデザインやマップ、音楽を作っていく。今回は、開発の手間が比較的かからない3DS版の制作を先行させ、そこでシステムやシナリオの調整を行い、その間PS4版では家やタンスなどのグラフィックを制作。3DS版での調整が終わったら、それに追随する形でPS4版の制作を本格化させるという流れで行われた。
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