安倍改造内閣に冷ややか、支持率回復は困難

禅譲をにらんだ「岸田シフト」には関心も

実際、内閣改造後も、解散のリスクはくすぶり続けるとみられている。自民党だけでなく、民進党も支持率を低下させているほか、小池百合子都知事の「都民ファーストの会」も国政進出はまだであり、反安倍票の「受け皿」がそろっていないためだ。

支持率低下に歯止めがかからなければ、「受け皿」が整っていないうちに解散を行い、風向きを変えるという戦略を取る可能性がある。議席数を多少減らしても与党で過半数を確保できれば、「勝利宣言」をすることも可能だ。

一方、内閣改造で支持率が上昇すれば、選挙に勝てる可能性が高まったとして、解散に打って出る可能性も高まる。2018年9月に自民党総裁任期、同年12月には衆院議員の任期満了を迎える。時期的に追い込まれることは選挙戦略上、避けたい。

十分な「受け皿」がないからこそ、解散に踏み切るはずで、総選挙で自民党が勝つ確率は低くない。しかし、イギリスのメイ首相が今年6月の同国総選挙で経験したように、事前の支持率は高くても選挙に負けるリスクもあり、難しい判断を迫られる。

このため、解散に対する市場の反応は円高・株安になるとの見方が多い。「海外勢は不透明感を嫌う。アベノミクスにはほぼ期待していないので、13年のような海外勢の大きな日本株買い越しはないだろう」とクレディ・スイス証券の株式本部長、牧野淳氏はみている。

岸田派の勢力拡大

今回の改造人事で、市場が注目したのは、新内閣の「岸田シフト」だ。改造前の同派の閣僚ポストは岸田氏と山本幸三地方創生担当相の2人だったが、今回は林芳正氏、小野寺五典氏、上川陽子氏、松山政司氏の4人が入閣。新内閣で最大の「派閥」となった。

自民党の名門派閥「宏池会」(岸田派)会長である岸田氏は、外相から党三役の政調会長に就任。これまで経験のなかった党要職に就くことで、「ポスト安倍」の有力候補として、市場からも大きな注目を集めることになりそうだ。

ただ、自民党内の権力移譲であれば、アベノミクス政策を大きく変えるのは難しいとみられている。同氏は財政再建派と目されているが、足元の経済状況を踏まえると緊縮財政策は取りにくい。金融緩和を止めれば、少なくとも短期的には円高・株安だ。

党人事発表後の会見で、岸田氏は「アベノミクス政策を進めながら、成長と分配の好循環を完成させなければならない」と述べた。

ニッセイ基礎研究所チーフエコノミスト、矢嶋康次氏は「アベノミクス政策は行き詰まり感が強まっているものの、金融緩和などで巨大化し、大きく変えるのが難しくなってしまった」と指摘。政策の対案を出しにくくしてしまったことは、日本にとって将来の禍根になりかねないと懸念を示している。

(伊賀大記 編集:石田仁志)

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