例えば2016年のビアフェスの企画内容をみても、ありきたりの大手ビール会社などとの共同企画ではなく、地元を中心としたクラフトビールを集め、オリジナルグラスとセットでしっかり料金をとって自立的に運営されていることが分かる内容になっています。また公園内の利用についても、参加者にはしっかり注意喚起がなされており、持ち込みはもちろん、「飲酒後の本丸庭園や天守閣への入場も禁止」している旨が記載されています。
このように公園を利用するうえで最低限のルールを守り、特段の問題もなく自立運営される取り組みさえ禁止されてしまうことは、本当に公共性のあることなのか、大変疑問が残ります。
公共の場所での「飲酒」は、品格がないのか
実は、私も昨年、とある政令指定都市での公共資産利活用推進の会議において、市関係者とぶつかったことがあります。議論になったのは、河川の利活用です。河川における飲食を含めた事業は、昨今の「アーバンBBQ」(都市部でのバーベキューサービス)の発展からみても市民ニーズが高いのです。そのため「ほとんど使われていない河川などは、もう少し市民が明確な目的をもって計画的に貸し出すべき」という提言をしました。もちろん、利用代金を徴収し、その収入で河川の安全管理や各種設備更新などに活用していくこととセットで、です。
しかし、その政令指定都市の市長は「私は飲食を公共の場でやることには反対」とハッキリお話されました。「禁欲的なまちづくりをやっても誰も楽しくならないですよ」と返答したところ、「私は禁欲的なまちづくりが好きなんです」などと平気で話を返され、唖然としたことがあります。
実は、この話は後日談があります。その後、筆者がもう一度他の都市など具体例を挙げながら細かな話をしたところ、市長は理解を示してくださり、さらに他の関係者の方の努力もあって、今では都市部の公園などを活用した、飲食を含む魅力ある企画が、官民をあげて進行中です。
どうやら、松本市の教育委員会といい、この政令都市といい、公共の側には「飲酒を含む飲食というものは低俗なこと」という見方が、未だに根強くあるようです。では、実際にそうした方々が酒も飲まず、飯も食わないかといえばそんなことはなかったりします。
もちろん、泥酔客などを放置するような企画は適切ではありませんが、飲酒も含め、多くの人の「日常生活行動の中に確実に存在している企画」を一つ一つ禁止していくと、しまいには単にこうした公園の利用目的がどんどんなくなっていきます。結果として、「禁止ばかりで誰も使えない公園になってしまう」という本末転倒のことがおこります。
少なくとも、松本城公園の一件は、議論がしっかりなされたか疑問であり、非公開の教育委員会の会議で「飲酒は品格がない」ということで、過去に実績ある企画まで中止要請がなされることは、あまりに理不尽です。こうした決定に至った背景の説明は欲しいところです。
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