「夢の高速鉄道」リニア実現への長い道のり 新幹線開業より前に開発スタート

拡大
縮小

2007(平成19)年12月、JR東海は2025年度を目標に、首都圏と中京圏を結ぶリニア中央新幹線の建設を自己負担を前提として推進することを決定。2009(平成21)年には東京―名古屋市付近間3ルートの路線長や工事費などを発表し、2011(平成23)年には国土交通大臣が全国新幹線鉄道整備法に基づき中央新幹線の整備計画を決定した。

技術面でも、2009年には試験車両MLX01-901Aの先頭形状がよりロングノーズ化され、トンネル突入、通過時を考慮した車両の形状に大きく変更。リニア中央新幹線の具体的な姿がいよいよ見えてきた。

アルプスをバックに走るL0系(筆者撮影)

その後、2013(平成25)年8月には山梨リニア実験線の延伸が完成し、営業運転を見据えた新型車両「L0(エルゼロ)系」によって走行試験が再開された。東海道新幹線の初期電車「0系」の名を冠した形式に、夢の超特急世代の筆者には特に親しみを感じ、山梨実験線でL0を撮り続けた。2015(平成27)年4月21日にはL0系7両編成が時速603kmを記録し、鉄道の世界最高速度記録を更新している。

難関乗り越え「のぞみはかなう」か

東海道新幹線計画が持ち上がったとき、「時速200kmはプロペラ機の離陸速度、そんなこと実現できるはずない。万里の長城、ピラミッドと並ぶ世界の三バカ」などと国鉄内部でも揶揄されたと、ある新幹線開発者の話を聞いたことがある。リニア構想についても計画当初はそのような意見が多くあったのも事実だ。

いまや、そのような風潮はL0系の登場と、進み始めた工事によって払拭されたといえる。だが、リニア中央新幹線にはまだまだ大きな課題も残っている。都市部の大深度地下トンネル、赤石山脈を貫く長大トンネルなど、技術的に難易度の高い工事が立ちはだかっているのは事実だ。しかし、日本の鉄道技術は必ずや難題を克服して未来の鉄道を実現してくれることであろう。「のぞみはかなう」と……。

南 正時 鉄道写真家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

みなみ・まさとき / Masatoki Minami

1946年福井県生まれ。アニメーターの大塚康生氏の影響を受けて、蒸気機関車の撮影に魅了され、鉄道を撮り続ける。71年に独立。新聞や鉄道・旅行雑誌にて撮影・執筆を行う。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT