ルンバは「室内データ収集」の最新鋭機だった マッピング技術がカギに

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 7月24日、ロボット掃除機「ルンバ」のメーカー、米アイロボットは、ルンバを使って集めた利用者の室内情報をIT(情報技術)家電メーカーに売り込もうと狙っている。写真は米マサチューセッツ州ベッドフォードのアイロボット本社。提供写真(2017年 ロイター)

[24日 ロイター] - ロボット掃除機「ルンバ」のメーカー、米アイロボット<IRBT.O>は、ルンバを使って集めた利用者の室内情報をIT(情報技術)家電メーカーに売り込もうと狙っている。自動掃除機に過ぎないルンバがデータ収集の最先端機器に大化けするかもしれない。

部屋の寸法のほか、ソファやテーブル、照明器具など家具の配置に関する情報は、IoT(インターネット・オブ・シングス)家電を備えた「スマートホーム」を進めたいハイテク企業にとって次の開拓分野。

アイロボットのコリン・アングル最高経営責任者(CEO)によると、スマートホーム向けの照明器具、温度調節装置、セキュリティー用カメラなどが既に市場に出回っているが、いずれも室内の物理的環境の把握という点では無力。しかし、ルンバの最上位機種に搭載されたマッピング技術で状況が一変する可能性があるという。

アマゾン・ドット・コム<AMZN.O>やアップル<AAPL.O>といった音声認識技術を使った家電製品を発表済みの米大手ハイテク企業などは、アイロボットの考え方を支持している。IHSマークイットによると、スマートホーム機器の昨年の市場規模は98億ドルで、今年は60%拡大する見通し。

アイロボットは3月、アマゾンの音声認識技術「アレクサ」と互換性を持つルンバの製造を開始した。アングルCEOはロイターのインタビューで、今後数年以内にアマゾン、アップル、アルファベット<GOOGL.O>の「ビッグスリー」のうち1社以上との間で、マッピング情報の売却で合意に達する可能性があると述べた。

これまでのところ、アングルCEOの経営戦略は市場で好意的に受け止められている。アイロボットの株価は6月半ばに一時102ドルを付け、1年前の35ドルから大幅に上昇。昨年の売上高が6億6000万ドルだったのに対して、株式時価総額は25億ドル近くに膨らんだ。

アイロボットは1990年の創業で、当初は米軍用に爆弾処理ロボットを製造して成功を収めた。2002年にロボット掃除機の分野に進出。軍用関連事業は昨年売却しており、米ロボット掃除機市場で88%のシェアを握っている。

ルンバの価格帯は375ドルから899ドル。全機種が赤外線とレーザーによる探索距離の短いセンサーを装着し、障害物を避けながら作業する。しかし、2015年に発売された旗艦の「900シリーズ」はカメラと新たなセンサー、ソフトウエアを搭載し、マッピングが可能になった。

今ではSLAM(自己位置推定・環境地図作成)技術により、ルンバなどロボット掃除機の上位機種は、作業をいったん停止し、再充電のために充電装置に自力で戻り、充電後に先ほど作業を停止した位置から掃除を再開することすら可能だ。

コーネル大のガイ・ホフマン教授(ロボット工学)は、空間を詳細にマッピングする技術はスマートホームにとって「飛躍的な進歩」だと話す。同教授によると、マッピング情報の定期的な更新によって(1)音響装置を室内の音響特性に合わせる(2)エアコンの空気の流れを管理する(3)窓の位置や時間の経過に応じて照明を調整する──といったことが可能になる。

さらにIT家電メーカーは、室内情報に基づいて顧客に商品を売り込むこともできそうだという。

アイロボットの戦略には逆風も吹く。先ず収集したデータの利用についてプライバシー保護の観点から問題との指摘が出ている。アングルCEOは、消費者の許可がない限りデータを売却することはないとしている。

もう1つは低価格メーカーとの競争激化。ニューヨーク・タイムズ紙は5月、ルンバの上位機種は機能からみて割高だとして、競合メーカーの安いロボット掃除機に軍配を上げた。

アイロボットにとって、こうした新興のライバルから身を守る手立てとなっているのが全世界で1000件に及ぶ特許群。同社は4月、ロボット掃除機に関する特許を無断で使用したとしてライバル社を提訴した。

(Jan Wolfe記者)

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