英国のEU離脱で開いてしまったパンドラの箱 欧州各地で広がる反移民感情の行き先
実際、2016年末に実施された世論調査は、イタリアが欧州随一の「移民排斥国」であることを示していた。ある調査によると、「イタリアにはあまりにも多くの外国人が暮らしすぎていているので、もはやイタリアではないように感じる」という問いに、イタリア人の52%が同意していた。
フランスもイタリアと大きく変わらず、同様の調査では47%が「外国人が多すぎてフランスではないように感じる」と答えている。つまり、フランスは欧州における第2の移民排斥国というわけである。
ヘンリー・ジャクソン・ソサエティが先般ロンドンで開催した会議で講演者たちは、通常、多くの人は移民を受け入れられるが、突然波のように押しかけてきたり、その国の国民と「分離」していたり、自分とは違う民族の国民だったりした場合は、受け入れることは容易ではないと話していた。
この会議で講演したバークベック・カレッジのエリック・カウフマン政治学教授は、「人々の考え方を形成する最も重要な要素は、人口統計学であり、民族的な変化と融合のバランスだ」と書いている。
カナダの例は参考にならない
カナダのような多様性にうまく対処している国々は、移民を積極的に受け入れている。オタワ州の公式移民ウェブサイトには、「異なったバックグラウンドと文化は受け入れられるばかりか、奨励されている。国民が1つのタイプである必要はなく、多様な人々で構成されていてもいいのです」と書いてある。
が、カナダはその立地上の理由から、絶望的な移民たちが殺到しない場所でもある。つまり、カナダは誰を移民として受け入れるのか選択できるのだ。カナダのこの「ポイント式移民政策」は数年間、経済成長を促進することに焦点を合わせ、カナダ経済のニーズに合わせて必要な技術と経験を持っている人々を見つけることを優先してきた。
コミュニティの固い結束や「支配を取り戻したい」国民、そして移民問題と英国が現在抱える問題は、多くの欧米諸国が抱えている問題とそう変わらない。先述のロンドンの会議で専門家たちが出した結論は、この国を支配するエリート層たち自らが反動主義者になり、移民流入や国家主権の喪失に反対する人に対抗すべきだということである。国を率いるリーダーたちは、有権者による大量移民への反対などを、永続的な人種に基づいた憎悪に基づいたものだと考えるべきではない。もし、同胞の多くがそんな心の持ち主であったなら、私たちは本当に大変なことになってしまう。
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