英国のEU離脱で開いてしまったパンドラの箱 欧州各地で広がる反移民感情の行き先
いまや欧州全体で支持を得ている考え方は、政治、あるいは企業のトップの考え方とはますます反りが合わなくなってきているように見える。その兆候は、ある調査にも表れている。外交政策シンクタンク、チャタムハウスが発表したEU加盟10カ国に住む欧州人1万人を対象とした調査では、回答者の55%がイスラム教7カ国の入国を禁じる入国制限について賛成しているのだ。
また、同シンクタンクが先月発表した大規模な調査によると、「人々の中で不満は浸透しており、大多数はEUを批判的に見ており、EUが主権を加盟国に戻してほしいと思っていて、移民の影響を危惧している」という。EUから恩恵を得てきたと思っている人は、全体の34%のみで、これはエリート層の71%とは対照的だった。
欧州各国で高まる反移民感情
ドイツとスウェーデンは多数の移民を引き受けているが、その移民の多くは絶望し、困窮している。スウェーデンは「人道的超大国」を自称しており、人口に対する移民の割合は欧州随一である。
しかし、4月にストックホルムで、ウズベキスタンの亡命者がバンを運転して群衆に突入し、5人を死亡させて以来、移民に対する反感が高まっており、現在は国民の半数が移民を減らしてほしいと考えている。移民排斥を訴えるスウェーデン民主党はいまや同国の第2政党で、警察は不法移民を取り締まるように支持されている。
ドイツでは、昨年約100万人の移民が入国を認められてから、それ以降受け入れる移民の数を大きく減らしているものの、極右グループによる移民保護施設や移民の自宅への攻撃は頻繁に起きており、1日当たり10件近く発生している。
また、イタリアでも過去4年間で50万に上る難民が危険な思いをして海を渡って亡命している中(途中1万3000人が命を落としている)、移民に対する反感が高まっており、今や欧州を目指す移民の3分の1に当たる人たちを救助しているNGOが移民を「促している」と非難されるまでになっている。