絶好調グノシーが「大転換」に踏み出した理由 今期の強気計画はアナリストも疑問だが…

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新規事業の育成にも余念がない。グノシーは5月以降、ファッション・グルメなどの女性向け情報を提供する「LUCRA(ルクラ)」、フリマをはじめ複数のショッピングアプリで横断的に商品検索や価格比較ができる「Bazzary(バザリー)」という2つのアプリを次々と発表している。

背景にあるのが、グノシーが決断した“戦略転換”だ。具体的には「多機能・単一アプリ」の戦略から「単一機能・複数アプリ」(配信アルゴリズムなど、アプリの裏側の仕組みはそれぞれ共通)へと修正している。

かつて同社は、決済、漫画、チラシなど、ニュース以外の機能をグノシーアプリの中に取り込み、ユーザーとの接点を増やす構想を掲げていた。ただ、それでは思うような成果を出せなかった。「情報リテラシーが高くない多くのユーザーにとっては、複数の機能を一つのアプリに入れ込んでしまうと複雑で使いづらい。結果としてあらゆる機能が使われずに終わってしまうことを学んだ」(福島CEO)。

一方、エンタメ・スポーツニュースが中心で若年層向けの「グノシー」、政治経済を含む王道ニュースをそろえる中高年向けの「ニュースパス」と特徴を明確に分けた両アプリは、ユーザーの重複率が5%と、会社が想定した「最大10%」という値以下に抑えることができている。この勝ちパターンをほかの未開拓領域でも存分に生かして成長を目指すほうが、より現実的な戦略だと判断したわけだ。

成長余地はまだあるのか?

大胆な戦略転換とともに好業績をたたき出したグノシーだが、もちろん課題もある。

そのひとつが動画への対応だ。独自の動画キュレーション配信アプリ「ビデレー」の試験運用を通じて研究開発を進めており、今期はこの知見を「グノシー」内の動画配信に生かしていくという。だが、SNSやニュースアプリ各社の中には、すでに広告メニュー化していたり、一定の収益化が進んでいたりする例もある。出遅れ感は否めない。

決算説明会では、アナリストから「直近の動向をみると、売上高107億円は強い(ハードルが高い)目標では?」など、今期計画に対する厳しい見方も聞かれた。これに対し福島CEOは、既存事業は計画通りに進捗しており、新規事業の貢献をほとんど見込まずとも十分達成可能であることを強調した。だが、新規事業の育成とバランスを取りながら高い成長率を維持するのは、決して容易ではないだろう。

スマホ向けニュースの市場成長を牽引してきたスマートニュース、グノシーなどは、サービス開始からすでに丸4年以上が経過し、スマホアプリの世界で古株といえる領域に入ってきた。一方、今年2月にはコミュニケーションアプリのLINEがニュースページを見やすくするための刷新を行うなど、競争はますます激化している。

急激な市場成長に終わりが見えたときに、グノシーは変わらず勝ち続けられるのか。勝負はまだこれからだ。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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