トランプ「支持率最低」政権の深刻すぎる前途 就任半年で政策動かず、ロシア疑惑が重し

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ジャーナリストのスーザン・チラは『ニューヨーク・タイムズ』(6月29日)の記事「誰がトランプのツイッターを好むのか、その理由は何か」と題する記事を寄稿している。そこで「トランプ大統領を支持する頑固な保守主義者たちは、(トランプ大統領がツイッターで)社会的、政治的規範を破ることで社会にショックを与えるのを楽しんでいる。彼らは人々を侮辱することで大喜びしている。トランプ大統領はこうした支持層にアピールしているのである。そうした大統領の行動は、意図的であれ、衝動的であれ、自分の支持層を対象としたもので、それ以上でない」と書いている。

トランプ大統領は景気回復と失業率低下という好条件で出発した。ジョージ・W・ブッシュ大統領は就任直後にITバブル崩壊に見舞われ、連続テロ事件で衝撃を受けた。バラク・オバマ大統領もリーマンショック後の戦後最大の不況への対応を迫られ、就任後1か月で7870億ドルの史上最高額の景気対策を共和党の反対を押し切って実現した。そして経営危機に直面していたGMを救済しなければならなかった。

トランプ大統領には差し迫った課題はない。しかし、世論の見方は厳しい。ABCとワシントン・ポストの世論調査では、「トランプ政権の政策は進捗しているかどうか」という質問に対して、「進捗している」と答えたのは38%、「進捗していない」との回答が55%だった。

確かにトランプ大統領の具体的な成果は乏しい。大統領に就任して半年が経とうとしているが目立った成果は見られない。ホワイトハウスは4月25日に「トランプ大統領の100日間における歴史的成果」と題する声明を発表している。しかし、そこで指摘されている成果は、相次いで「大統領令」を発令することでオバマ政権の成果を覆したというものである。“後ろ向きの成果”はあるが、自らが掲げた政治課題の達成は遅々として進んでいない。この半年間にトランプ大統領は何をしたのだろうか。

公約のほとんどは議会に阻まれて実現化せず

選挙公約でオバマケアの廃棄を最大の課題に掲げたが、当初案は共和党右派の抵抗により下院での採決の見通しさえつかず、撤回せざるを得なかった。修正して再度法案を提出したが、現在に至るまで議会で法案が成立する見通しは立っていない。

メキシコとの間に壁を建設する案は、「大統領令」で実施を命じたが、議会は建設費の予算計上を認めず、最終的に建設がどうなるかは不明である。最近、トランプ大統領は、壁にソーラーパネルを取り付け、電力を販売することで経費を賄うという奇策を提言している。建築コストをメキシコ政府に支払わせるというトランプ大統領の主張は、メキシコ政府に拒否されたままだからだ。

もう一つの主要政策のインフラ投資でも目立った進捗を見せていない。トランプ政権の最初のインフラ投資計画は航空管制システムの民営化であるが、議会の共和党議員の十分な支持を得る見通しは立っていない。共和党が過半数を占める下院でも、法案成立に必要な支持を確保できない状況が続いている。共和党議員は、地方の道路や橋梁の修復が急務なときに、なぜ最初に航空管制システムの民営化なのか、と疑問を呈している。航空管制システムの民営化以外、具体的なインフラ投資計画は明らかになっていない。

公約のひとつである減税もまだ成案はない。民生費削減、軍事費増加を柱とする来年度予算案も、民主党の反対もあり、簡単に議会で成立するとは思われない。増収要因と考えられていた国境調整税は既に消えてしまっている。トランプ大統領は財政赤字の縮小を目標に掲げているが、議会予算局の大統領の予算案に基づく財政赤字の試算では、2016年の5850億ドルから2017年は6930億ドルに拡大、2018年度は5980億ドルに減るが、2019年度には再び増加に転じ6890億ドルの財政赤字を計上することになる。

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