一向に進まない、金融機関のリスク資産シフト 市場動向を読む(債券・金利)

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一方、外債投資にはポートフォリオ・リバランス効果が表れてきたようにも見える。対外証券投資状況を見てみると、対外中長期債投資が7月以降、6週連続で計5.2兆円という大幅な買い越しに転じている。主体は生損保ではなく銀行だ。くだんの預貸率の低下傾向にあぶり出された余資が、外債へとにじみ出た格好だ。この動きが持続するのかどうか注目される。

5月の大型連休明けの週から6月までは7週連続、計6兆円の売り越しだった。背景は、米量的緩和の早期縮小懸念から米金利先高観が急速に蔓延したことだったとみられる。この大きく売り越した分の単なるカバーにとどまるなら、買い越し傾向はそろそろ収束することになるだろう。ポートフォリオ・リバランスの本格稼働ならば長期化するだろう。

米量的緩和の出口戦略の行方や欧州景気の回復局面入り(?)など外債投資環境は不透明感が強まっていることを加味すると、買い越しがこのペースで続いていく可能性は低そうだ。

金融機関の余剰資金は国債に回帰

以上のように国債以外の資産へのシフトを渋っている金融機関の投資資金や余剰資金は、結局、その矛先を国債市場に回帰させ始めたように見受けられる。

ひとつの傍証は、利付国債入札における応札倍率の動きだ。ここもと、2年債と5年債を中心に総じて持ち直してきている。先週13日に実施された5年債入札では、応札額を落札額で割って求める応札倍率が過去最高を記録した。これは高いほど投資家の落札ニーズが大きいことを意味している。

こうしてみると、引き続き、異次元緩和の狙いである国債からのポートフォリオ・リバランスは、奔流とはなりにくいだろう。とするなら、日銀と金融機関との間の“国債争奪戦”はむしろこれから激化し、そのことが債券需給の引き締まった状態を維持し、欧米債安や物価上昇率の高まり(=期待インフレ率の上昇)などによる長期金利への上昇圧力をうまく抑制していきそうだ。

その場合、実質金利(=名目金利-期待インフレ率)を押し下げるという黒田日銀の別の目的は成就する半面、ポートフォリオ・リバランスによるアベノミクス効果の最大化という狙いは達成できない。それは黒田日銀にとって痛しかゆしである。
 

石井 純 三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ債券ストラテジスト

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いしい じゅん

いしい・じゅん●1986年東北大学法学部卒、三菱銀行(当時)入行、89年から資金証券部で公共債ディーラー・セールス、債券リサーチを担当、95年三菱ダイヤモンド証券(当時)に出向し、チーフマーケットエコノミストなどを経て、2001年(当時東京三菱証券)から現職。機関投資家の人気ランキングで常に上位。

 

 

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