一向に進まない、金融機関のリスク資産シフト 市場動向を読む(債券・金利)

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日銀は異次元緩和を推進することで、金融機関などにこのポートフォリオ・リバランスを促し、貸し出しの増加や円安・株高を後押しして、デフレ脱却を目指している。筆者も当初、異次元緩和のポートフォリオ・リバランス効果はかなり強まりそうだと予想した。

実際、金融機関などに対しポートフォリオ・リバランス圧力はかなり強まってはいるものの、肝心の資産シフトはこれまでのところ本格化していない。

都市銀行や地方銀行の貸出残高は前年比プラス2%台と、伸び率を高めているのだが、一方で、資金需給の繁閑を的確に映し出す貸出金利(約定平均・総合)が現在約1.15%と過去最低を更新中である。この矛盾は、期待成長率の回復を背景に企業の設備投資資金などの借り入れ需要が勃興しているわけではないことを、端的に物語っている。

多くの銀行は、日銀が金融緩和策の一環で設けた融資支援制度を活用し、競争上、かなり無理をして貸出金利を下げ、貸し出しを捻出しているのではないか。だから、預金残高の順調な伸び以上には貸出残高を増やすことはできず、結果として預貸率の低下傾向に歯止めがかかっていないのだ。都銀・地銀の預貸率は6月に67.4%まで下がり、過去最低を更新した。

株式は生損保、銀行とも売り越し傾向が続く

株式への資金シフトも観察されない。投資部門別の株式売買代金(差額)を見てみると、異次元緩和が始まってから買い越し傾向に転じた業態は投資信託のみ。しかし、小幅にとどまっている。信託銀行は売り越し額を減らしたものの、買い越し基調に転じたようには見えない。

ちなみに、円安・株高というアベノミクス相場が緒に就いた昨年11月後半から異次元緩和のスタート前月の今年3月までの約4カ月間の売り越し額が累計2.9兆円だったのに対し、以降の約4カ月間は累計1.7兆円に減速している。そして、生損保と銀行も売り越し傾向を維持している。

両業態は国際的な自己資本規制であるバーゼル規制やソルベンシーマージン比率などがより厳しくなることへの対応のため、リスクウエートが高い株式のエクスポージャーを減らしてきた経緯がある。それだけにやはり、ポートフォリオ・リバランス圧力が強まったからといって、おいそれと残高を復元しようという考えはないようだ。

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