日本株に長期投資するならメガバンクを狙え フィンテック進化で皆がそろそろ重要性に気づく

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メガバンクの連結ベースPBR(株価純資産倍率)を見ると、三菱東京UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの3グループとも、0.60~0.70倍前後で、いずれも1倍を大きく割り込んでいる。

単純化すると、PBRの1倍割れは、銀行としてのビジネス価値がまったくないことを意味するが、メガバンクが3グループとも、日本の金融システムの基幹的機能を担っており、そのビジネス価値が極めて大きいことは言うに及ばない。

しかも、今振り返れば、メガバンク3グループは、1990年代の平成バブル崩壊と金融不安、業界再編という荒波をくぐりぬけてきた生き残り組だ。

フィンテックが進化、メガバンクの再評価はすぐそこ

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この結果、不良債権比率は歴史的に見て最低レベルにまで低下しており、さらに、ROE(株主資本利益率)、PER(株価収益率)など、株価のバリュエーションは世界の主要銀行と比較しても割安だ。

また、最近よく耳にするフィンテックが進化、普及することで、銀行には、大いに活躍の余地がある。たとえば、AI(人工知能)を用いて情報解析を行うにあたり、何よりも重要なのは、膨大な顧客データを持っているかどうかだ。

資金の出入り、借り入れ状況、保有金融資産、銀行口座を通じて引き落とされている各種決済情報など、銀行には個人や法人のさまざまなおカネに関するデータが集積している。今は単なる顧客情報として、これらのデータを蓄積しているだけだが、将来は、これらのデータから個々人の消費動向、嗜好、リスク許容度などをAIで分析し、その人に最適な金融商品を選別して推奨するような時代が来る。いや、実現は目前といっても良いだろう。

このように、銀行ビジネスは非常に大きなポテンシャルを持っている。今後1~3年で、これら銀行ビジネスが持っている付加価値に気づく投資家が増えるはずだ。そのとき、銀行株は本格的に上昇し、それと共に、バブル崩壊から長期にわたって日本経済を苦しめてきたデフレが終わったことにも、誰もが気づくのではないか。

鈴木 雅光 JOYnt 代表、金融ジャーナリスト

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すずき・まさみつ / Masamitsu Suzuki

1989年岡三証券入社後、公社債新聞社に転じ、投信業界を中心に取材。2004年独立。出版プロデュースやコンテンツ制作に関わる。著書に『投資信託の不都合な真実』、『「金利」がわかると経済の動きが読めてくる!』等。

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