北米自動車市場で危機の連鎖、最初に淘汰されるのはどこか
今期に入ってもGMの低迷は続く。上半期の米市場と歩調を合わせるように、最量販車種の「シボレー」は15・5%減。ほかにも「GMC」が18・7%減、「ポンティアック」が12・9%減、「サターン」が18・6%減と、軒並み2ケタのマイナスだった。主力8ブランドのうち、プラスなのは1ブランドしかない。
GMも少しでも在庫を減らそうと、ゼロ金利販売などの政策を必死に打ち出している。だが在庫供給日数は現状70日台と、日本勢の50日前後と比べ依然高水準だ。インセンティブ(販売奨励金)も、1台当たり3000ドル台半ばと、年初より500ドルは増えている。
当然ながら足元の決算は厳しい。08年12月期第1四半期(1~3月期)は、金融会社GMACへの評価損、部品会社デルファイへの支援損などで、33億ドルの最終赤字を計上。これで3四半期連続赤字となった。
そのGMACにしてもGMにとってはわずか2年前まで、「本業の不調を補ってくれる優良子会社」(業界関係者)。06年には投資ファンドのサーベラスに過半数の株を売ったものの、それまで税前利益で20億~30億ドルを稼いでいた。ところが前期は一転して、11億ドルの赤字に転落。サブプライム関連の損失など住宅ローンに加え、自動車ローンの採算悪化が直撃したためである。
自動車も金融も、光明はほぼ見当たらない。前期末にGMに残った現金および現金同等物は273億ドル。今期に入ってキャッシュフロー上は、毎月10億ドル前後の現金流出があるという。メリルリンチが指摘した資金繰り懸念とは、1年も経てば、半分近くまで手元現金が減ってしまう、との試算に基づくものだ。くしくもGMが発表した150億ドルの手元積み増しは、メリルリンチが必要と断じた調達額と同じである。
もはや生き残るために、なりふり構わず資産を切り売りするGM。ただ、大規模リストラに迫られているのは、何もGMだけに限らない。
転売か、事業分離か? デトロイト3の行く末
フォードは、大型車3工場の小型車工場転換などをすでに発表済みだが、ほかにも高級乗用車「ボルボ」、マツダ株(保有比率33・3%)の売却がうわさされている。またクライスラーも、ミニバン工場の閉鎖やホワイトカラーの削減を打ち出したことに加え、「ジープ」「ダッジ」「クライスラー」の3ブランド放出すらささやかれるほどだ。
それでも全体のパイが急減する中、破綻を本気で回避するなら、“解体”に当たるような抜本策が不可欠だ。GMでは好調な海外事業と、不調の北米事業とを分離する案まで浮上。クライスラーに至っては、筆頭株主のサーベラスがいつ転売するか、視線が向けられている。不振の米国勢をめぐって、欧州や日本、新興国勢との再編も否定できない。
今年はGMにとって設立100周年の節目。かつて「ビッグ3」と称されていた米大手3社は、トヨタ自動車とホンダに2位と4位を占拠され、いまや「デトロイト3」と格下げで呼ばれることも多くなった。いったい3社の中で、どこが先に“不測の事態”を迎えるか。秋の新車シーズンを控え、株式市場では不穏な空気が漂っている。
(週刊東洋経済)
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