不動産不況が波及 ゼネコン共倒れ危機!
連鎖破綻こそまだ発生していないものの、ゼファー倒産の影響も大きい。債権者リストには大口の焦げ付きを被ったゼネコンの名前が並ぶ。約19億円の債権が取り立て不能となった若築建設が09年3月期に予想する営業利益は12億円、同様に約13億円が焦げ付いた飛島建設の営業利益予想は32億円だから、打撃は小さくない。7月29日にはマツヤハウジング(東京都品川区、負債総額279億円)も破綻。倒産ラッシュは収まりそうにない。
マンション業者からゼネコンへの支払いは「テン・テン・パー」と言われる条件が一般的だ。着工時に工事代金の1割、中間時に1割、引き渡し時に残り8割が払われる。下請け代金を立て替える必要があるゼネコンにとって、条件は決してよくない。しかも最近は売れ行き鈍化などで、手形払い、しかも120~150日という長期サイトが珍しくなく、回収リスクは高まっている。
マンション建築大手の長谷工コーポレーションは、リスク回避のため業者に毎月の均等払いを求めている。土地情報仕入れから販売代行まで手掛け、業界で独自の地位を築いてきたからこその強気姿勢だが、それでも現下の不況ではリスク管理に苦労している。近藤産業(大阪市)の倒産では約46億円もの焦げ付きを抱えた。販売在庫を担保に取るなど債権保全措置を講じているが、半分程度は損失になる見通しだ。
地方の有力ゼネコンが都市部で野放図な受注
支払い条件が悪いにもかかわらず、ゼネコンがマンション受注に熱心だったのは、手っ取り早く工事量を確保できたためだ。だが、不況が深刻化する中、各社は受注の選別を強め始めた。飛島建設は例年の半分程度にマンション工事の受注目標を下げた。公共工事の入札においてランク分けの基準となる経営事項審査で、かつてほど規模の大小が問われなくなったのも、選別受注をしやすくしている。
一方で、公共工事が細る中、地方ゼネコンが都市部の民間建築、とりわけマンション工事を積極的に受注する例も目立つ。首都圏のマンション業者の倒産で、たびたび大口債権者リストに登場する九州のゼネコンがある。現在、主力銀行が財務調査を始めたとの情報もあり、注目が集まっている。「今回の不動産不況の影響は地方ゼネコンのほうが大きい」(信用調査会社)との見方もある。多数の下請け業者を抱えるゼネコンは倒産の影響が大きい。中堅下位クラスの三平建設でも一般債権者は600名近くに及ぶ。ゼネコン倒産は地方経済をさらに疲弊させかねない。
7月下旬には月末決済をめぐり、神奈川県の上場マンション会社の帰趨がにわかに注目された。このときはゼネコンが“手形ジャンプ”(決済繰り延べ)を認めたことで急場をしのいだ。「取引銀行との話し合いで前向きな姿勢が確認できないと、そうした判断はしない」。ゼネコン幹部はそう語る。“生かすか、殺すか”の判断も含め、神経戦は続く。体力がなければ、共倒れ。我慢比べはまさにこれからが正念場だ。
(高橋篤史 =週刊東洋経済)
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