原料高に追い打ちか 新日鉄で大規模火災
7月29日早朝、新日本製鉄の八幡製鉄所で大規模な火災が発生した。
コークス炉に石炭を運ぶためのベルトコンベヤーが何らかの原因で燃え落ち、コークス炉から出る可燃性ガスの配管を破損して引火。黒煙を伴って、一気に炎上した。
幸い人的被害はゼロ。生産設備への影響も軽微で、翌30日には鉄鋼生産を再開した。操業停止が1日で収まったため、減産は1万トン程度。製品在庫を30万トンほど抱えるため、供給面への当面の影響は最小限にとどまる見込みだ。
しかし、問題も残る。火災を起こした炉のコークス生産能力は月8万トン。当然ながら、事故原因の究明とそれに伴う対策が完了しないかぎり、操業再開のメドは立たない。
八幡には現在、1週間分(3万トン)のコークス在庫があるが、これを使い切ってしまうと、他の製鉄所からの移送に頼ることになる。ただ、各所ともフル生産が続き、十分な調達は困難とみられる。
となれば、外部からのスポット調達に手を出さざるをえない。スポット指標である中国産コークス価格は、足元1トン700ドル超。長期契約価格を200ドルも上回る水準だ。
火災2日後、同社は今期の営業利益予想を大きく上方修正した。当初の製品値上げの想定が極端に低かったことが主因だ。ただ、前期との比較では8000億円の販売価格改善に対し、原料価格は1・1兆円の増加。原料高基調に変わりはなく、火災復旧作業が長期化すれば、思わぬ経営圧迫要因になりかねない。
(猪澤顕明 =週刊東洋経済)
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