展望席の伝統「ロマンスカー」はこう進化した 歴代の名車、思い出の車両はどれ?

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富士山をバックに御殿場線を走る20000形RSE(筆者撮影)

1991(平成3)年には、それまでJR御殿場線の御殿場までの運転だった「あさぎり」が沼津まで延長され、同時にJR東海も車両を新造して相互乗り入れを行うことになった。これに合わせ、小田急はRSE(Resort Super Express)20000形、JR東海は371系特急電車を導入。どちらも7両のうち2両を2階建てとした編成で注目を浴びた。

しかし、前面展望についてはこれまでのロマンスカーと異なる運転席越しの展望で、小田急伝統の展望室はHiSEまでか、と思ったロマンスカーファンも多かった。RSEも2012年に引退し、1編成が短縮のうえ富士急行に譲渡され「フジサン特急」として走っている。

RSE引退後に「あさぎり」の運用を引き継いだ60000形MSE(筆者撮影)

「あさぎり」はRSEの引退と同時にJR東海が運行から撤退し、区間も御殿場まで短縮されて再び小田急の片乗り入れとなった。現在は2008(平成20)年に地下鉄千代田線直通ロマンスカーとして運転開始した60000形MSEが使用されている。

1996(平成8)年には30000形EXEが誕生した。この電車はこれまで観光色が濃かった小田急ロマンスカーにあって、通勤にも使える日常利用を目的とした電車で、この電車の登場によっていよいよ展望タイプのロマンスカーの時代は終わったか……と思われた。

ロマンスカーは夢をのせて

冠雪した富士山を背景に酒匂川を渡る50000形VSE(筆者撮影)

だが2005(平成17)年には、それまでの沈黙を破って再び展望タイプのロマンスカー50000形VSEが登場。小田急ロマンスカーの伝統であった前面展望席と連接構造を復活させた。ただ、鉄道ファン、小田急ファンにとっては、オレンジベースのロマンスカーカラーではなく白に赤帯というシンプルな色で登場したことが惜しかったともいう。しかし、筆者は今年の冬、新雪をいただいた富士山と50000形とを撮影したが、ホワイト一色も新雪に映えて気に入った1枚になった。

観光特急として箱根、江の島への観光コースを席巻した小田急ロマンスカーだが、SEやNSEなどの往年の名車はすでに姿を消し、小田急ロマンスカーの特徴あるスタイルを踏襲し人気のあった7000形LSEも引退の時期を迎え、改めて「撮り鉄」たちの熱い視線を浴びている。

私と同年代の、昭和30年代の鉄道少年だった友が言う。「東京の子どもたちはね、小田急ロマンスカーで箱根に行くことが夢だったんだよ……」と。その夢をかなえるべく、小田急ロマンスカーは今日も相模路をひた走っている。

南 正時 鉄道写真家

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みなみ・まさとき / Masatoki Minami

1946年福井県生まれ。アニメーターの大塚康生氏の影響を受けて、蒸気機関車の撮影に魅了され、鉄道を撮り続ける。71年に独立。新聞や鉄道・旅行雑誌にて撮影・執筆を行う。

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