ベトナム最悪の海洋汚染、意外な「その後」 謝罪から1年、魚はまだ死んでいる
打ち壊された漁師の村
まるで爆撃を受けたかのようだった。建物のほとんどは崩れ落ち、瓦礫(がれき)が散乱する。残った家もおよそ人が住めそうな様相はなく、廃墟のような集落だった。
ほぼ無傷のカトリックの教会があった。その周囲を歩くと、少なくない数の人たちと行き交う。みな静かに手を前に組んで会釈をし、見知らぬ訪問者にも多くが「シン・チャオ(こんにちは)」と丁寧な言葉をかける。こんなベトナム人の風景はあまりお目にかからない。ここは住む人すべてが敬虔なキリスト教徒の村だという。ただし、その穏やか雰囲気とは裏腹に、家々が打ち壊されている理由を村人たちに尋ねた途端、彼らの発する言葉は辛辣で止まることがなかった。
「戦争よりひどい。まだ人が住んでいるのに、警官たちが重機で家を壊しました。共産党の野郎がここを強奪して、中国に売っ払ったのです」
ベトナム中北部のハティン省。美しい海岸に面し、ほとんどが漁師の仕事で暮らすドンイェン村は、いま消滅の間際にある。住む土地が国に接収され、強制的な立ち退き計画が進んでいるからだ。


















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