あと、当たり前すぎてあまり気づかれていないことなのかもしれないけれども、タッチペンでの操作を前提としたDSや3DSのソフトは、スマホに移植されても操作感を損なうことが少ない。
過去のコンシューマー機の名作がスマホに移植されることは多いが、どのゲームも苦労しているのが仮想コントローラーの実現だ。特に仮想方向キーの実装は鬼門といえ、動きの激しいアクション系はもちろん、それほど操作を急がないRPGですら、スマホ上での仮想コントローラーでは上下左右の移動にストレスがたまりがちだ。そのためコンシューマー機からの移植ソフトで長時間、違和感なくプレーできるゲームというのはなかなか見つからない。
そんな中で、タッチペンでの操作がほとんどである『ゴーストトリック』は、タッチパネルでしか操作できないスマホでも、まったく違和感なく快適に遊ぶことができる。ストーリーに没頭したいゲームだからこそ、ストレスのない操作性は利点といえる。
ここから、アドベンチャーゲームで最も重要なストーリーについて語ろう。大枠のストーリーはとてもシリアスだし、作中では何度も人が死ぬ。とてもハードボイルドで陰惨なゲームかと思いきや、そこは逆転裁判シリーズでもあまりに個性的すぎるキャラクターを産み出してきた巧舟氏のゲームである。ファンから「タクシュー節」呼ばれ愛される独特のシリアスとギャグの混ざり具合は、このゲームでも健在だ。
個性派ぞろいのキャラクターたち
このゲームに登場するキャラクターたちも、とんでもない個性派ぞろいであり、メインストーリーは重いながらも、それを感じさせないような軽やかさで進んでいく。
メインヒロイン的な存在であり、ストーリー上では何度も殺されることになるが、むしろ殺されることに慣れているんじゃないかと思うほどに、無茶で前向きな女刑事「リンネ」。リンネと同居している、ドーナツ好きで、どこかマイペースな少女「カノン」。そしてその飼い犬でやたら甲高い声で吠(ほ)える「ミサイル」。白いロングコートを羽織った長身でダンディな「カバネラ警部」。彼の一挙手一投足はインパクト大。どうして階段を上り下りするだけであの動きになるのか。
さらに、リンネがその動向を調べている、家族の前で妻を撃ち殺したという囚人「D99号」。彼は独房の中で絵を描いているのだが……。
最後に、豪華な部屋でいかにも何か悪巧みをしてそうな、謎の老人シスなど、怪しいと思えばいくらでも怪しいキャラクターたちがてんこ盛りである。
ほかにも、ミサイルが吠えると壁をも壊さん勢いで壁をたたいて怒ってくる、隣人のマダムとその娘。シセルが死んだゴミ捨て場の管理人。レストランのコック。公園で何かを見張っている刑事、そして公園の宅地化に反対するためにビラを配っている、いかにもおかしな様子の住民などなど、多くの個性的なキャラクターがストーリーを彩っている。
各キャラクターはあまりにも魅力的で、書きたいことは山ほどあるのだが、これからプレーする人の興をそぐようなことはしたくない。魅力をほとんど伝えられないのが残念だ。
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