これって何語?「外国語風」名前の列車10選 外国人も首をひねる不思議な造語がいろいろ

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9)サンダーバード(JR西日本)

すっかり列車名として定着した「サンダーバード」(筆者撮影)

サンダーバードとはアメリカ先住民族に伝わる神話に登場する空想上の鳥のことである。北陸本線の由緒ある列車名「雷鳥」は、北アルプスに生息する鳥に由来する伝統あるものだ。その列車を新型車両に置き換えるに際し、「サンダーバード」と命名したのであるが、雷=サンダー、鳥=バードと単純に直訳したのではないか、との疑惑がある。

英語の雷鳥はgrouseもしくはptarmiganであるから、スーパー雷鳥=サンダーバードとしたのは誤訳であると言われてもいたしかたないと思う。そうした指摘に気づいてか、デビュー当初のテレビCMでは、イギリスの人気テレビ番組「サンダーバード」のキャラクターを使い、雷鳥とは別物だとのイメージを作り上げていった。特急「雷鳥」が過去のものとなり、特急「サンダーバード」は北陸本線の特急列車として、すっかり定着したようである。

英語ではなくドイツ語です

10)ラピート(南海電鉄)

外観のインパクトで人気の「ラピート」はドイツ語名だ(筆者撮影)

関西空港アクセス特急の名称は「ラピート」。珍しくドイツ語である。速いという意味の単語は英語でrapid。Rapid serviceなどとして快速列車、特急列車を示す言葉としてよく使われる。ドイツ語も同じスペルのrapidと書いて「ラピート」、英語の発音ラピッドとは異なる。

ドイツ語は、旧制高校の時代とは打って変わって、今では一部の専門家やドイツ語圏好き以外には、あまりなじみのない言語となってしまった。Rapidと書くと「ラピッド」としか読んでもらえないので、あえて発音記号をロゴとして用いている。発音記号も、学校ではまともに教えなくなってしまったので、どれだけの人に読んでもらえるかわからないが、母音を伸ばす記号以外はアルファベットと大差ないので、何とか判別できるのであろう。

まだまだ日本では、カタカナ語をありがたがる風潮が続いている。意味不明のカタカナ表記であってもファッショナブルととらえる人が多い証でもある。そんな中で近鉄の特急「しまかぜ」のような愛称は正統的であり、こうした命名方法がもっと主流となってもいいのではないかと思う。

野田 隆 日本旅行作家協会理事

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のだ たかし / Takashi Noda

1952年名古屋市生まれ。早稲田大学大学院修了(国際法)。都立高校に勤務のかたわら、ヨーロッパや日本の鉄道旅行を中心とした著作を発表、2010年に退職後は、フリーとして活動。日本旅行作家協会理事。おもな著書に『にっぽん鉄道100景』『テツはこんな旅をしている』『シニア鉄道旅のすすめ』(以上、平凡社新書)、『テツ道のすゝめ』(中日新聞社)、『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』(光文社知恵の森文庫)、『テツに学ぶ楽しい鉄道旅入門』(ポプラ新書)などがある。

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