正社員妻の「離職」で起こる家計の大転換 「仕事辞めたい」と愚痴るくらいが丁度いい
1つめの理由は、夫婦の合計所得が減少し、その分生活の余裕が失われるという、実に単純な話です。アラサーのカップルがいたとして、ふたりの合計年収が結婚前の時点で合計900万円(夫婦とも450万円)あったとします。単純計算で1カ月あたりの収入を考えれば、月75万円。結婚後それぞれの稼ぎから生活コストを折半すれば、好きなときに外食できますし、旅行も年に数回は行ける、かなり余裕のある生活を楽しめるはずです。
しかし、結婚退職すれば言わずもがな自分の年収がゼロになり、夫の年収450万円だけでふたりの生活をやりくりすることになります。目の前の生活に、以前のような余裕はありません。ひとりの稼ぎで2人分やりくりするのですから当然です。
その後、夫の年収が上がったとしても、ひとりで年収900万円を稼げる人は限られています。したがって、子どもを持つ、住宅を購入する、といった選択をしたとしても、費用の確保にずっと苦労しつづけることになります。
自由に使えるおカネが少ないストレス
2つめの理由は、自らが自由に使えるおこづかいも減少する、ということです。専業主婦のおこづかいで、退職前の水準を期待することは不可能です。単純に考えても夫婦の合計所得が半減すれば、おこづかいは半減するのが道理ですし、夫だけがおカネを稼いで自分が所得ゼロになれば半分のこづかいを確保することも困難になります。
明治安田生命の調査(「家計に関するアンケート調査」4月28日公表)によれば、夫のおこづかいは「3万1764円」である一方、妻のおこづかいは「1万8424円」となっており、夫のほうが70%も多い結果となっています。
専業主婦になって仕事のストレスがなくなったとしても、今度はおカネのストレスが生じるということを考えるべきです。時間的余裕ができたことを楽しめるのは最初の数カ月だけ。自由に友達と旅行をすることも、外食に行くことも、自由に服を買うことも、これまでより困難になるわけです。雑誌に登場する理想的な「奥様ライフ」はあくまで理想像でしかないのです。
3つめは、再就職が困難になる、ということです。正社員が正社員に転職することは比較的容易です。しかし正社員の立場を数年離れると、それだけで正社員としての再就職が困難になると言われています。先ほど挙げたソニー生命の調査でも、専業主婦に対する再就職に関する質問で、再就職は厳しい、とする回答が77.6%にのぼっています。
正社員のチャンスが見つからないためにアルバイトやパートを始めてしまうと、これがまた正社員としての就職を目指す余裕をなくしてしまい、そのまま非正規で働き続けるという厳しい実態も無視できません。「男女共同参画白書 平成28年版」によると、25~34歳女性の非正規雇用割合は40.9%と低いところ、35~44歳女性では54.6%と上昇し、年齢を追うごとに非正規雇用の割合は高まり続けます。
「出産して子どもが大きくなったらまた正社員でやり直そう」と離職前に軽く考えるのはとても危険で、「ずっと無職」になるリスクを背負っていると考えたほうがいいわけです。
以上を踏まえれば、専業主婦になることでおそらく期待しているであろう生活が送れる可能性は低そうです。
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