「過食と残業」やめられない人の意外な共通点 「やめたいのにやめられない」への対処法

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國田:無駄かどうかは、一種の結果論なのかもしれません。洋服好きの人はたくさん洋服を買い込んで、結果的に「タンスの肥やし」が増えて収納に困っていたりしますが、そうした買い物は本当に無駄なのか。

松村:無駄を繰り返して、人は学習していく。無駄を経験した人でなければ、本当に大事なものも見つけられないはずです。それを最初から迂回せず一直線で、最短距離で頂上に到達しよう、到達できる、という発想は、物事の本質を甘く見ていると思います。

國田:無駄にも、良いムダと悪いムダがあると。

良い無駄と悪い無駄はなにが違うか

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松村:「仕掛学」はひと言でいうと行動の選択肢を増やすということなんです。

今までになかった選択肢が与えられたから、今までやらなかった人、できなかった人が行動するようになる。でも一見、選択肢が絞られた状態、極論すればノーチョイスという状態が最も無駄なく、効率よく見えます。

國田:でもそれでは一部の動く人しか動かない。

ちょっと話が飛躍しますが、古典落語に出てくる江戸時代の庶民は日中、早々と仕事を終えて、昼間からお酒を飲んだり、銭湯に行ったりしていますよね。これってまさに「良い無駄」じゃないでしょうか。

松村:日本人の中に、のどかで無駄を楽しむゆとりが、歴史的に見ても文化としてしっかりあるのですよね。一見、無駄な体験がいつか肥やしになるかもしれない、と昔の人は経験的にわかっていた。

國田:無駄を否定するのではなくて、より良い人生をつくっていくための「無用の用」として活用してみる。

そうすると自分にかけている自己規制からも自由になって、人生を楽しむ余裕が生まれてくる。品質もアートの域にまで磨かれる。最初は、無駄な習慣をどうやめるかということしか考えていなかったのですが、すばらしい気付きをいただきました。

松村先生、今日はわざわざ大阪から来ていただき、ありがとうございました。

松村 真宏 大阪大学大学院経済学研究科教授

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まつむら なおひろ / Naohiro Matsumura

大阪大学大学院経済学研究科教授。1975年大阪生まれ。大阪大学基礎工学部卒業。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。2004年より大阪大学大学院経済学研究科講師、2007年より同大学院准教授を経て現在に至る。2004年イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校客員研究員、2012~2013年スタンフォード大学客員研究員。趣味は娘たちを応援することと、猫のひじきと遊ぶこと(遊んでもらうこと)。

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國田 圭作 博報堂行動デザイン研究所所長

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くにた けいさく

博報堂行動デザイン研究所所長。1959年生まれ、1982年東京大学文学部卒業後、博報堂に入社。以来、一貫してプロモーションの実務と研究に従事。2013年より現職。大手ビールメーカー、大手自動車メーカーをはじめ、食品、飲料、化粧品、家電などのブランドマーケティング、商品開発、流通開発などのプロジェクトを手掛ける。2006年に行われた第53回カンヌ国際広告祭の部門賞(プロモライオン)で審査員を務める。

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