企業・市民社会・国連のシナジー 社会的責任の時代 功刀達朗、野村彰男編著 ~ グローバルCSRの未来を考える
本書は「社会的責任の時代」の国際的な論調の最先端を伝える一書である。「CSR」や「企業の社会的な責任」という言葉は、日本でもようやく定着しつつあるが、それが国際的には、どのような水準、方向にあるかをつかむことができる。
編著者の一人である功刀達朗氏は、「国家は国益のために領域限定的な主権国家の論理に基づいて行動するため、率先して地球の公益を守り、人類の共通善を求める責任を担うことには制度的限界を持っている」と指摘している。
国家だけでなく、国連のような国際機関、民間企業、NPO・NGOが、協調して地球規模の包括的な問題解決にあたらねばならず、企業の社会的な責任も重くなる。
企業の経営者、管理職が本書を読むと、ここまで責任を負って経営しなければならないのか、いささかたじろぐ部分があるかもしれないが、どこまで何に責任を負うべきなのか、本書をたたき台にして考えることができるだろう。
学者、NPOリーダー、コンサルタントに加え、経営者も筆を執っている。
富士ゼロックスの有馬利男元社長は「日本企業の伝統とGCの普遍的原則」で、日本ではCSRを経営者の倫理観、義務感でとらえる傾向が強く、経済行為として位置づけが弱く、これでは持続性のあるCSRにならないと警告する。末吉竹二郎三菱銀行元取締役は、金融が持つ社会的な影響力の大きさへの自覚を問うている。
「平和構築への企業の貢献」「腐敗防止の国際的な潮流」「ディーセント・ワークの実現を目指すILO」「気候変動と企業行動」の各章は、企業に問われ始めている労働差別、地球環境等への責任に関する最新動向を伝えて刺激的だ。
くぬぎ・たつろう
国際基督教大COE客員教授、UNU高等研究所客員教授、国際協力研究会代表。外務省ジュネーブ代表部公使、国連事務次長補など歴任。
のむら・あきお
グローバル・コンパクト・アカデミック・ネットワーク共同代表。朝日新聞論説副主幹、国連広報センター所長、早稲田大客員教授など歴任。
東信堂 3360円 286ページ
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら