首都圏の鉄道、沿線人口の増減率ランキング 1位は田園都市線、ワースト路線はどこだ?

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なお、常住人口の鉄道利用動向を見る指標の1つが、定期券の利用状況だ。日本民営鉄道協会が各社の状況を調べたところ、2015年度から2016年度の1年間における定期券利用者伸び率のトップは東京メトロの2.38%、2位は京成電鉄の2.23%、3位は京浜急行電鉄の1.82%という結果になった。

(注)1年間の利用者の合計。単位は1000人 (出所)日本民営鉄道協会資料を基に編集部作成

2005~2035年の夜間人口の増減率では、京成は18、19位、京急は17位。両社とも下位だっただけにその奮闘ぶりが際立つ。定期券利用者が増えた理由については、「雇用状況の改善が理由」と両社は口をそろえる。

ただ、京成や京急も沿線に大規模マンション分譲をはじめとした施策を行っていることを考えると、沿線人口を増やすための努力が実を結んだと考えることもできる。

冒頭の「人口予測は変えられます。努力次第で人口減少を数年先に遅らせることができるのです」という発言は、当然ながら東急以外にも当てはまる。特に注目したいのが、小田急電鉄と相模鉄道だ。両社とも人口増減率、定期券利用者伸び率ともに中下位にランクされるが、小田急は念願の複々線化が秒読み段階に入っている。

小田急と相鉄は期待が大きい

複々線化により運行本数が増え、朝の通勤ラッシュやノロノロ運転が劇的に改善されるという。それによって小田急側は、田園都市線や京王線などの競合路線から小田急線へ切り替える人が一定程度いると見込んでいる。それだけではなく、より首都圏の広範な地域から「通勤が楽なら小田急沿線に住みたい」と考えて引っ越してくる人も少なくなさそうだ。

相鉄は2019年度下期にJR、2022年度下期に東急東横線との相互直通運転を計画する。実現すれば、新宿や渋谷など都心と乗り換えなしで結ばれる。所要時間も短縮され、相鉄線の利便性は格段にアップする。

また、ゆめが丘駅前では計画人口5200人という大規模開発が進行中。このほか、沿線には返還された米軍基地跡地もあり、将来住宅に転用される可能性がある。

こうした変化を踏まえて、将来予測もまた修正される。国立社会保障・人口問題研究所は今年4月に新たな将来推計人口を発表した。こうした調査を踏まえて次に発表される沿線人口予測ではどのように順位が変動しているのだろうか。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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