「改革」後継者 安倍首相辞任に揺れる市場心理
安倍晋三首相が12日に辞意を表明した。外国人投資家を中心に「小泉改革」を支持してきた市場は、突然の後継者辞任に戸惑う。彼らがおそれるのは「改革」の後退だ。(『週刊東洋経済』9月22日号より)
あまり知られていない事実だが、9月5日水曜日の午後、「安倍内閣総辞職」との出所不明のうわさが、金融市場を駆け巡った。東京株式市場では売りが先行。日経平均株価は前日比262円安に沈んだ。
それから1週間後。うわさは現実となった。安倍晋三首相は突如、辞意を表明。首相の所信表明を受けた衆院本会議での各党代表質問の直前という前代未聞の辞任劇だった。参院選での記録的な敗北で「首相の退陣自体は予想していた」(バンク・オブ・アメリカの藤井知子日本チーフエコノミスト)市場も、自民党幹部に辞意を伝えるタイミングまでは織り込んでいなかった。株価はいったん買われた後、一転して売られる乱高下の展開となった。
「外国人投資家の間で小泉前首相は圧倒的支持を得ていた」。コメルツ投信投資顧問の山本平社長はこう振り返る。2005年8月の「郵政民営化解散」をきっかけに始まった日本株の上昇相場を牽引したのは「小泉改革」を期待する海外勢の買いだった。1万2000円台で推移していた日経平均は年末に1万6000円台まで駆け上がった。改革路線の継承を掲げていた安倍首相が辞任の決意を表明したことで、市場では“主役”を務める外国人の投資意欲の冷え込みにたいする警戒が急速に広がっている。